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不条理音盤委員会 572 The Howling Hex 「Nightclub Versions of the Eternal」
- 2008/05/24(Sat) -
その人はどこか壊れていた。
もちろん、片桐も壊れていた。
壊れた者同士、初めもなく終わりもなく、ただただ時間と空間を浪費することを楽しみにして、一日中Cabert Voltaireとショパンのポロネーズ集を繰り返し聴きながら、その人はアルベール・カミュを、片桐はフランツ・カフカを読み耽っていた。世界の意味を知る気もなく、世間に目を背けていても生きていけると信じていた。

howling hex

と、いうわけで、壊れた人間の代名詞とも言える元プッシー・ガロア、ロイヤル・トラックスのジャンキー・ロッカーNeil Michale Hagety率いるThe Howling Hexの2nd。アヴァンギャルドでもエクスペリメンタルでもない正真正銘のロック・サウンドなのですが、極端に削ぎ落とされたミニマリズムの極致もいえそうな音の中から狂気と正気のはざまを反復するがごとき聴こえてくるジャンク・サウンドは最早奇跡的なほど美しいとしか言いようがなく、それは単にNeil Hagetyと言う人の原初的な本能の発現そのものであって、理由づけも何も必要としないエクスタシーのような一枚です。
トライバルなビートに痙攣しているようなギター、それに脱力ヴォーカルが延々続く「Hammer And Bluebird」、、パーカッシヴだけど踊れないガラクタのようなビートに素敵で軽やかな歌メロとコーラスがかぶる「Lips Begin To Move」、思いきり歪みきったギターの音が夢見心地にさせてくれる「This Planet Sweet」、ヘロヘロのファンク調のリズムに弛緩しまくりのギター・ソロがかぶる「How Many Steps Now」、メロディーというよりは単に思いつきで弾いたフレーズではないかと錯覚するようなフリーキーなギターが印象的な「Good Things Are Easy」、剥き出しのサイケデリックとも言えそうな荒々しい感じの「Six Pack Days」、異形の祝祭空間を演出してくれる「Out,Out, Out」まで、まさに超クールなアルバムです。ヴォーカルもギターもリズム隊もそれぞれ自分のペースで音を奏でるさまは、一聴するとポリリズミックにも聴こえますが、そのズレ具合が半端ではありません。まるでCanとAmon Duulが一緒にアフリカでジャム・セッションを行っているといった感じのアメリカ製クラウト・ロックの一大傑作なのでした。

試聴音源はこちらから
http://www.amazon.co.jp/Nightclub-Version-Eternal-Howling-Hex/dp/B000GIXW9W

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