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不条理音盤委員会 502 Nocturnal Emissions 「Whisky 23.5.82」
- 2007/06/06(Wed) -
その人はレア・チーズケーキが好きで、濃い目のアッサムとの組み合わせが絶品であると常々口にしていたものだが、当時いきつけの喫茶店のそれは、その人が「極上」と賞賛するだけあってまろやかな味わいと香り高い紅茶が相俟って、それこそ優雅な時間を過ごせたもので、その人が不機嫌になると即座にその店に誘って、機嫌を直すのにつとめたものである。
いつものごとく、レア・チーズケーキを頬張っていたその人は突然「E..NeubautenとNocturnal Emissionsではどっちがかっこいいと思う?」というようなことを突然訊いてきた。ノイズやインダストリアルといったジャンルが一つのムーブメントになりつつあったとはいえ、E..Neubautenは1stアルバム「Kollaps」を発表したばかりであった。

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確かにメタル・パーカッションが打ち鳴らされる中にとどろく野生の咆哮にも似たBlixaの荒々しい叫びはトリートメントされているとはいえ、その原初的で破壊的な衝動は刺激的であった。しかし、既にCabaret Voltaireの洗礼を受けた身にとってはNocturnal Emissionsの方に知性のようなものを感じていた。「Tissue Of Lies」のアバンギャルドさ、「Fruiting Body」の徹底されたカット・アップ・コラージュと、単なるノイズの洪水にとどまらず縦横無尽に切り貼りされた彼らの音はまさに情報戦であり、徹底した心理戦でもあった。そして彼らの音は究極のエクペリメンタルな・ポップであり、まぎれもないダンス・ミュージックであった。
そんな彼らのライブ・アルバムはスタジオ盤以上のテンションと昂揚感が記録されている。

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偶発性を優先しながら原始的な祝祭と最新のテクノロジーを組み合わせながら、Nigel AyersとCaroline Kは一心不乱に金属を叩き続け、Daniel Ayresの操作するテープ・コラージュが彩りを添えていく。ある意味で有機的、ある意味で無機質、そんな矛盾するようなベクトルを内包したパフォーマンスが続いていく。自分達の音楽を「革命のためのサウンド・トラック」と呼んでいたN.Emissionsは徐々にアブストラクトなダンス・ミュージックに比重を移していった。それはカタルシスの快感の誘引を目的としていたのであろうが、個人主義の流行とネット社会の繁栄といった面で見れば、彼らの目指していた「世界を剽窃する」といったテーゼは確実に浸透しつつある。その点でN.Ayersの戦略と選択は正しかったといえよう。
とはいえ、最近のN.Emissionnsの作品は手垢にまみれた手法の拡大再生産に過ぎず、興味を失って久しいが(それでも時々買ったりはしている)、ノイズの渦に身を委ねる快感を会話したその店も今となってはもうなく、その人と会うこともなくなってしまったので、その頃を想うと妙に懐かしかったりもする。

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コメント
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>Tommy姉さん
・・・これがENのシンボルなのだ。何か原始時代の壁画から借用したとの話なんだけど、一時期これ流行ったんだよ~~。勿論俺っちもこのジャケのTシャツ持っている。
2007/06/07 23:14  | URL | 片桐真央 #-[ 編集] |  ▲ top

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>ころんさん
・・・インダストリアル系は苦手でしたか。。。たしかにTGとかは音も滅茶苦茶ですが、ジャケットやコンセプトもアンチ・モラルな雰囲気が強くて敬遠されがちですね。Missing Foundationは片桐的には可愛い感じがしますが。。。。
初期インダストリアル系はビートと呼ばれる部分が少なくて、聴きにくい印象もありますが慣れると面白いものです。ま、工事現場で足を止めてしまうという副作用は確実にあります。
2007/06/07 23:11  | URL | 片桐真央 #-[ 編集] |  ▲ top

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>goglemanさん
・・・NEは初期の頃はいきなりノイズ&インダストリアル系で敷居が高いかも知れませんが、最近の作品は単なるエスノ・コラージュ+クラブ・ビートで聴きやすいかもしれません。とはいうもののハウスやテクノに精通しているgoglemanさんにはかなり物足りないような気がしますが。。。。
ENは世間的には2ndアルバム「OT」の方が人気が高いのですが、片桐的には「Kollaps」の方が好きなのです。
2007/06/07 23:07  | URL | 片桐真央 #-[ 編集] |  ▲ top

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なんだかわからないけど「目玉のおやじ」みたいで可愛いです!v-40
2007/06/07 21:45  | URL | Tommy #-[ 編集] |  ▲ top

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おどろおどろしい連中が出てきましたね。スロッビング・グリスルについて行けなかった私は、ノイズとかインダストリアルと言うと、妙に警戒感を持ってしまいつつも怖いもの見たさで興味もあるという、複雑な感情を持っています。試しに買ってみたミッシング・ファウンデーションなんかも聞いてられませんでしたし。特に初期ノイバウテンには非常に興味があるのですが、多分聞いてられないだろうなあという思いから、いまだに聞いたことがありません。
2007/06/07 12:40  | URL | ころん #-[ 編集] |  ▲ top

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冒頭のロマンチックストーリーからEN&NEネタになるとは誰も様相だにしないんですが、しかし多分綺麗なお姉さんと日曜午後の気だるい昼下がりにレアチーズケーキとアッサムティーをやりながらEN&NEネタで熱く盛り上がるのもそれはそれでロマンチックです。
EN1stは持ってなく、NEにおいては一枚も持ってないような不届き者ですが、どちらかというとNEに興味深々なので探して見つかった場合は買いますね。
2007/06/07 09:29  | URL | gogleman #-[ 編集] |  ▲ top


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(※photo:Nigel Ayers) 久々にNocternal Emissionsで検索をかけたらかなり面白いブログを発見。 →不条理音盤委員会 502 Nocturnal Emissions 「Whisky 23.5.82」 レア・チーズケーキとアッサム・ティーの香り漂う優雅な喫茶店に佇む男女2人の淡い風景描写... …
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