
80年代ネオ・アコースティック・ギター・ポップを語る上で欠かせないのがOrange Juiceなのですが、どうしてもこのバンドはEdwin Collinsばかりが注目されてしまう傾向があります。個人的には「You Can't Hide Your Love Forever」では彼と並んでJames Kirkの存在も大きいと思うのです。何気ないギターのカッティングと温かみのある歌声は決してEdwin Collinsにひけをとらないと思うのですが、本人もそれを意識したのか、両雄並び立たずという格言通りにJames Kirkは早々にOrange Juiceを脱退してしまいます。Memphisという自身のユニット(といっても彼だけですが)を立ち上げて「You Supply The Roses」というOJそのまんまのシングルを発表後、音楽シーンから姿を消していたのですが、2003年になってほぼ20年ぶりに発表したアルバムがこの「You Can Make It If You Boogie」です。個人名義では初のアルバムとなるこの作品はドイツの80年代ネオアコ偏執レーベルmarinaより発表されました。OJ時代の妙にクールな部分はさすがに鳴りをひそめていますが、全体に漂うスコティッシュの潔さを思わせるギター・カッティングとさりげなくく散りばめられた清冽なメロディー・ラインは当時のまんまです。昔なじみのPaul Quinnも参加して冒頭からOJ直系のサウンドが続きますが、その他にもボサノバっぽい「Nilsson」、切れの良いカッティングにジャズっぽい洒落たコード感が素晴しい「Fruitier Than Thou」などなど、メロディー作りの上手さがたまらなく素晴らしく、まるでギター・ポップのお手本のような作品に仕上がっています。「You Can't Hide Your Love Forever」にも収録されている「felicity」のスローなバージョンと、「You Supply The Roses」のドイツ語バージョンも入っています。
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http://www.mp3.com/albums/584131/summary.html

1989年の夏にカリブ海音楽のブームに便乗するような形で流れていた曲がKaomaの「Lambada」でした。どこかで聴いたことのある曲だと当時から思っていたのですが、実はこの曲がボリビアのフォルクローレ・グループ Los Kjarkasの「Llorando Se Fue(泣きながら)」だと気がつくには多少の時間を要したものです。あれよ、あれよという間にこの曲はヨーロッパのチャートを駆け上り、その余波で日本でも一大ブームとなったランバダだったのですが、これはジャンルではなくカリブ系やブラジル音楽のコンピレーションに例のエロチックなダンスをくっつけただけであるという極めて偽者っぽい雰囲気のものでした。異口同音のコンピが乱発される中で本家のKaomaが発表したのがこの「World Beat」というアルバムです。元々このグループはアフリカのアーティストTouré Kundaの活動休止中に暇をもてあましたバックバンドのMichel Abihssira(Drums)、Jean-Claude Bonaventure(keyboard)、グァドループ出身のギタリストJacky Arconteの3人が、やはりTouré Kundaのプロデュースやアレンジに関わっていたRoger Chyco Druの入れ知恵でブラジル人シンガーMonica NogueiraとLoalwa Bral、セネガル出身のFania Niangという 3人の女性ヴォーカルを迎えたスタジオ・セッション的なグループでした。完全に計算されたプロダクションはヨーロッパ人の目で見たエキゾティシズムという一点に集約され、カリブ海やアフリカのいろいろなリズムやサウンドをうまく取り入れた一大娯楽アルバムとなっているのです。「Lambada」で聴かれるメレンゲ伝統のアコーディオンを模したシンセ音や「Lamba Caribe」でのズークの借用、あるいは「Sindiang」でのアフリカン・リズムの効果的な使い方に見られるように、「踊れて、お洒落」というコンセプトに則った究極のやっつけ仕事的なアルバムとはいえ似非・ワールド・ミュージックと割り切って聴けば結構楽しめるアルバムであるのは確かです。高度消費社会から生まれた帝国主義・植民地主義知的音楽所有権及び音楽情報の搾取・簒奪・・・言葉を変えればこう表現できますね(笑)。

X-Mal Deutschlandは80年に結成されたドイツ・ハンブルグ出身の5人組のポジティヴ・パンク〜ネオ・サイケ系のバンドです。元々は女性ばかりのバンドのようでしたが、1stアルバム「Fetisch」を発表する頃には、Anja Huwe (vocals), Manuela Rickers (guitar), Fiona Sangster (keyboards), Manuela Zwingman (drums)の4人の女性と男性ベーシストWolfgang Ellerbrockという構成になっていました。この1stの「Fetisch」では既に4ADと契約していたとはいえ、持ち込んだ素材自体はドイツで作られたものであって、彼女たち本来のドイツ的な表現の模索と確立を求めたバンドの苦悩がそのまま音に表されている印象があります。冒頭から最後まで淡々としたサイケデリックなギターを背景にAnjaの祈祷や呪文を連想させるようなヴォーカルと輪廻のように反復リズムを刻むという、実験的精神に富むものでした。このアルバムの発表直後にCocteau Twinsのライブ・サポートをしたことを契機にUKで紹介された彼女たちは、熱狂的な絶賛をもって迎えられ、この「Fetisch」もインディ・チャートの3位を記録しました。まさに当時のUKのゴシック・サイケの過流に巻き込まれた印象なのですが、その他のバンドと比較しても、ヴォーカル以外はあまり小細工のないストレートな音作りが新鮮に耳に響いたのかもしれません。
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http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=1390920&BAB=A

ドイツ時代の名曲「Incubus Succubus」等をリミックスしたシングルを発表した前後にManuela Zwingmanが脱退し、新たに男性ドラマーPeter Bellendirが加わったX-Mal Deutschlandは初めて4ADの指揮下でアルバムを制作することになります。84年に発表された「Tocsin」では、前作でのドイツ的色彩は薄れて、表面上はイギリス的なネオサイケの音に変貌していますが、その結果空間的な広がりを持った音に仕上がっていて、流れてくる音にリアリティを強く感じるようになったと思います。またリズム・パートが男性になったことで、全体に強固なバックを背景にAnjaの無表情なヴォーカルに耽美性や叙情性も兼ね備えられたという印象があります。4ADのアドバイスのためかヴォーカルやギターに深くかけられたエコーは、Cocteau Twinsを思わせますが、その深いエコーが重々しいドイツ語の響きを柔らかく包み込み、「Reigen」「Begrab Mein Herz」のように前作には見られないポップなアプローチの曲をより効果的な作用に導いてくれています。最後のサウンド・コラージュっぽい曲の存在もアルバム全体を引き締めてくれたのですが、バンド自体はこの直後に崩壊してしまったのが残念です。このアルバム以降4ADを離れ、Anjaを中心に活動を続けていたようでアルバムも出しているようですが、自分は未聴です(謝X20)。
この「Fetisch」「Tocsin」の2枚のアルバムは国内盤で発売されたのですが皆様ご存知でしたか?
試聴音源はこちらから
http://www.mp3.com/albums/17923/summary.html