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不条理音盤委員会 676 Giorgio Moroder  「From Here to Eternity」
- 2010/01/23(Sat) -
最近なるほどと思った言葉の一つに「知的メタボ」というものがあります。
文字通り情報を鵜呑みにするばかりで、何の咀嚼も解釈もしないままに知ったかぶりをしてしまっていることを指すのですが、何しろちょっとしたことでもググって検索すればすぐにweb上でヒットするというこの時世ですから、確かに何でも知ったような気になってしまうということは反省しなければならないでしょう。このBlogもそんなものの一つなのかもしれませんね(苦笑)。

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と、いうわけで髭親爺ことGiorgio MoroderといえばDonna Summer等のプロデューサーとして知られ、ディスコ/テクノ/ポップス/映画音楽史に多大なる功績を残した、"The Father of Disco"の異名を持つイタリア人なのでありますが、元々はドイツを拠点にシンガー・ソングライターだったわけで(その辺りは未詳)、いかなる理由かは定かではないのですが、突如としてディスコ・サウンドに手を染めたこの髭親爺が作り出したのがいわゆるミュンヘン・サウンドというもので、煌びやかで豪華なシンセをメインとしたそのダンス・ミュージックは一世を風靡したものです。そういった勢いそのままに作り上げたこの1977年の「From Here To Eternity」では一説ではYMOの元ネタになったとも言われるほど呆れるようなシンプルなテクノ・サウンドが展開されています。
ヴォコーダーに導かれるシンプルなディスコ・タッチの「From Here to Eternity」から始まるこのアルバムは、ファンクっぽい「Faster Than the Speed of Love」を挟んで、呟くロボ声ヴォーカルに女性コーラスが彩りを添える「Lost Angeles」、Kraftwerkのようなフレーズが延々リフレインされる享楽的な「Utopia - Me Giorgio」、より華やかさを加味した「From Here to Eternity (Reprise)」、ロマンティックでメランコリーなヴォーカルを聴かせる「First Hand Experience in Second Hand Love」、コンピューターが表現する失恋ソングとしては最高傑作と個人的には思う「I'm Left, You're Right, She's Gone」、これぞ、ミュンヘン・ディスコといった感のある「Too Hot to Handle」まで、テクノ・ポップとディスコ・サウンドが見事に融合された作品に仕上がっています。特にヴォコーダーの使い方やファンクぽい打ちこみはEW&FやAtlantic StarといったUSデジファンクの先駆を成しているのでは?という気がする一方で、単調なドラム・マシーンやシンセの音色はYMOは元よりMuteレーベルのアーティストやOMDにそのままパクられたといった感があります。 今となっては音楽的には手あかにまみれた手法であるのは言うまでもありませんが、あらためて聴くとその素朴さに心がホッとするような印象もあるのです。。。。




試聴音源はこちらから
http://www.amazon.com/Here-Eternity-Giorgio-Moroder/dp/B00000ILGL




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不条理音盤委員会 637 Asmus Tietchens  「In die Nacht」
- 2009/05/30(Sat) -
つけ麺の話である。
最近つけ麺が流行しているらしい。と、いうのも某有名店流れに便乗したようなのだが、それにしてもそこから一歩突き進んだ独自の味を展開している店も多いのは麺好きとしては喜ばしいことではある。
で、評判のある店でお勧めなるものを食してみたのであるが、醤油ベースにガラム・マサラを加えたちょっとエスニックな味がちょっと不思議な感じがして美味だったのだが、もう少し辛さのバランスを工夫してくれると良いのでは?とも思ったりする。

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と、いうわけでジャーマン・テクノを語る時に避けては通れないAsmus Tietchens師匠の82年の4thアルバムである。師匠のアルバムはConrad Schnitzler親分と並んで膨大であるが故、その全容をフォローするには莫大な時間と金額を要する。しかも限定だったりするためになかなか追いきれない部分もあるのだが、最近初期の作品がボーナス・トラック入りでリ・イシューされて入手が容易になった点は歓迎すべき点である。
調子外れのようなシンセ音が最後にはダークな音に飲み込まれていくユーモアと恐怖が同居したような「Mit Zebras Rennen」、彼がプロデュースしたClusterを思い切りキッチュにしたような感覚の「In Die Nacht」、打ち込みに合わせてただでたらめに弾いているだけではないのかとさえ思えてくるインチキくさい「Höhepunkt Kleiner Mann」、最近の師匠の作品に通じるようなノイジーな「Kopfüber In Den Gulli」、妙にドラマティックな展開をもった「Spanische Fliege」、Neu!をそのままパクったような緩いハンマービート風のリズムの上をおちゃらけたメロディーが駆け抜けていく「Unter Fliegenden Tassen」、脱線してしまったTrans Europe Expressといった感のある「Regenwald」、静謐な電子音が延々と持続する「Park Und Guter Morgen」まで、どこまで本気か理解不能及び分類不可といえる音が無造作にそして傍若無人に振舞っているアルバムなのである。大概の曲はメロディーらしきものがなく、ただただ無意味とも言えそうな音が浮遊しているだけなので多くの人はお金を払ってまでこういう音を聴くことに対して疑問を持つであろう。しかし、Asmus Tietchensに対して理性を求める方が基本的に間違っているのである。師匠にとってはとにかく音を出すこと自体に意味があるのであり、聴く者もまた音を聴くという行為だけを要するのであり、そこに解釈は無用なのである。
もちろんこれはAsmus Tietchensを褒めているのである。

試聴音源はこちらから
http://www.millisong.com/index.cfm/hurl/idzAlbum/IdAlbumz58128/58128.htm

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不条理音盤委員会 626 LILIENTHAL/Same
- 2009/04/07(Tue) -
良く言われることであるが、騙す方が悪いのか騙される方が悪いのかという命題があって、それはもちろん最近「使っても減らないお金」なんぞというものにまんまに引っかかった人を笑おうと思っているからである。大体にしてそんなものがあるわけがない、ということにどうして気づかないのだろうか?人間の欲とは深いものである。捕まった爺も同じ手口で何度もやってきたというのだから、これはやはり「歴史は繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」という名言を思い出さずにはいられない。

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と、いうわけでClusterのDieter Moebius(Syn 、G)、名プロデューサーConny Plank(Syn Vo)、ドイツ・エレクトロニクス界の裏番長(笑)Asmus Tietchens(Syn)、謎のオランダ人前衛音楽家Okko Bekker(Syn、Per)、プログレ・バンドKRAANのJohannes Pappert(Sax、Fl、Ds)とHelmut Hatter(B)の6人が「LILIENTAHL」を名乗って制作した1978年のセッション・アルバム。MoebiusとPlankが手を組めばまさにエレクトロニクス音響工作しかない。ゆるいアンビエントに漂うシンセをベースに仲間たちが適当に思い浮かんだアイデアを次々と加算していったとしか思えないような作品で、無論スタジオでの遊びもふんだんに取り入れた気軽&気楽でリラックスしたムードが全編に満ちあふれているゆる~~いアルバムである。
曲の中で誰がどの楽器を担当しているかのクレジットはないのだが、打楽器のようなピアノに単音弾きのギター、発信音系のアナログ・シンセが絡みつくドラッギーな「Stresemannstathe」から既に頭がクラクラして快感に浸るのだが、独特の浮遊感を内包したスペイシーにも感じられる「Adel」で高揚感が増し、グニュグニュしたシンセ音とぎごちないロック・ビートの上で奏でられるトロピカル風の「Wattwurm」で逝きそうになってしまう。ドローンを使った内省的なシンフォニアで「Vielharmonie」で一瞬我に返ったかと思うと、また「Gebremster Schaum」で楽園の扉が提示され、ラウンジ・ジャズみたいな「Nachsaison」によって退廃の極みに深くはまり込んでしまうのである。
大人が本気で遊ぶという見本のような一枚であると思う。
何よりも今となっては簡単に入手出来るのが喜ばしいのである。

試聴音源はこちらから
http://www.hmvjapan.jp/product/detail/2627343/ref=4505

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不条理音盤委員会 618 Chris & Cosey 「Techno Primitiv」
- 2009/03/06(Fri) -
年度末を控えているのにもかかわらず仕事の進捗率が芳しくない片桐と言います。
何故か妙に眠気に襲われていて、時々これでもか!って、いうぐらい惰眠を貪ってしまうのですが、それでも何となく眠気が抜けきれなくて気がつけば二度寝・三度寝をやったりとまさに時間を浪費しております(汗)。ある方に言わせれば「寝ても寝ても眠いときは人生が変わる時」らしいので、その言葉を信じてグーグー寝ていますが、やはり人生はさほど変わらないのが困りものです。

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と、いうわけでEx-Throbbing Gristle の Chris Carter とCosey Fanittitti の夫婦ユニットが1985年にリリースしたアルバム「Techno Primitiv」です。TGやPTVはノイズ・エクペリメントとしては一級品なのですが、どこか漂ういかがわしさが苦手という人も多いと思います。そういう毒のような部分を排除して、純粋に実験的なポップ度を追求したような作品を二人は発表しているのですが、そのチープさとインチキくささはまるで量販店で売っているメイド・イン・チャイナの如く偽物らしい輝きに満ちています。
 不安さを増長させるようなシンセ音が不気味に響く「Hazey Daze」、初期Depeche Modeのようなベース・ラインをもった「Misunderstandings」、彼ら流のハンマー・ビートとも言えそうな「Morning」、男性ナレーションが延々と語るホラー映画のサントラのような「Haunted Heroes」、60年代のフレンチ・ポップのような可愛い歌メロをCoseyが退廃的に歌う「Stolen Kisses」、変則的なリズムのねじくれポップ「Shivers」、タイトル通り中近東風旋律がフューチャーされた「He's an Arabian」、ヴォコーダーを駆使した「Last Exit」、テクノとインダストリアルを折衷させたような「Do or Die」、昔の冒険映画(って死語?)のサントラみたいなエキゾ・サウンドのコラージュ作品「Techno-Primitiv 」、OMDのようなドリーミーな「Silent Cry」、実験的な音が絡んでいく「Sweet Surprize」までCoseyさんのヴォーカルとアナログ・シンセ主体の本当にタイトル通りの初期テクノ・ポップとしか言いようがない音が展開されていきます。殆ど打ち込みということやミディアム~スロー・テンポの曲ばかりということもあって、単調に聴こえてしまう面も少なくないのですが逆にここまでストレートなテクノ系サウンドというのは、1985年という時代を考慮してもあまり見当たらないような気がします。彼等の作品は最近になってようやく再発されてきましたが、その理由が何となく理解るような気がします。

試聴音源はこちらから
http://www.amazon.com/Techno-Primitiv-Chris-Cosey/dp/B00000E9SD

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不条理音盤委員会 617 Logic System 「Venus」
- 2009/03/05(Thu) -
某自動車のCMで水嶋ヒロさんの後ろでタンゴを踊っているお姉ちゃんが気になって仕方がない片桐と言います。
多分ラテン系だと思うのですが、ああいう女性の視線には思わずクラッとしてしまいます。

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と、いうわけで、富田勲氏の弟子にして日本シンセサイザープログラマー協会会長の松武秀樹さんのユニットLogic Systemの1981年の2ndアルバム。もちろん、松武さんといえばYMOのマニュピレーターとして幸宏さんの後ろで巨大なMoog-ⅢCとE-μをMC-8で操っていた方です。そんな松武さんが1stアルバム「Logic」で披露したシンセ・テクノロジーの可能性という技術的な側面をより深化させて、ポップスという普遍的な面に挑んだのがこのアルバムです。音質的には同時代のYMOの「BGM」や「Technodelic」に似通った面もあるのですが、オリジナルではなくカバー曲が多いこともあって、まさに電子音と人間の感情の温もりが同居している素晴らしいアルバムになっています。
ドーン・コーラスやストリング・シンセの音も絶妙な「Venus」、テクノ・ブルースといった感じの曲の合間に、師匠の富田勲氏の「展覧会の絵」で使われたシンセ音そっくりのフレーズが挿入される「Morpheus」、オフコースの曲を一大テクノ・シンフォニーにアレンジした「I Love You」、ジャーマン・テクノ風の「Plan」、ヴォコーダーを駆使したプログレッシヴな曲にNerthern Eastのファンキーなベースも絡む「Take a Chance」、「BGM」に収録されていてもおかしくないような重苦しい「Automatic Collect,Automatic Correct」、元々ジャズ好きだという松武氏がDon Grusin等を招いて西海岸フュージョン・サウンドを展開させた「Be Yourself」、アラビックなフレーズも取り込んだアヴァンギャルドな「Prophet」、ファンキー・タッチの「Metamorphism」、30秒ほどの電子コラージュ「EquivalentM」まで、とても30年近くも前の作品とは思えない刺激に富んだ内容で、まさに先見の明といった印象があります。とにかくシンセの音色や和音の組み立て方、音同士の絡ませ方といった部分などは現在のDTM~エレクトロニカ系の曲と並べて聴いても全く遜色がなく、逆に松武さんが見据えてきたものがようやく追いついてきたという感さえあります。松武さんが歩んできた道はそのまま日本のテクノ・ミュージックの歴史であって、彼なしにはシーケンサーやサンプリングの簡素化はおろか初音ミクさえも登場しなかったことを思えば、このアルバムはテクノ系ポップスの第一歩でもあるという意味でも記念碑的な位置づけになると思います。

1stアルバムから「Logic」を。。。。





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不条理音盤委員会 558 細野晴臣 「PHILHARMONY」
- 2007/12/28(Fri) -
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YMOの活動中はソロ・アルバムを制作しないと明言していた細野晴臣さんが1982年に突如として発表したソロ・アルバムです。最近のSketch ShowやHASでのエレクトロニカ路線や、自身名義での歌モノ路線もまた評価が高い細野氏なのですが、このアルバムは当時Alfa内に作ったYenレーベルの下、プライベート・スタジオのLDKで制作されたテクノとミニマル、アンビエントをうまく融合させたといった雰囲気で、全体的に作風がYMOの「TECHNODELIC」に近い印象があります。Prophet-5やMC-4といったお馴染みの機材の他にEmulatorとLinn LM-1をも多用しリラックスしたフットワークも軽やかな音を奏でてくれています。
笛の音のような奇妙なイントロから「Pi・Pi・Pi・Picnic・・・・」のヴォイス・サンプルが縦横無尽に展開していく「Picnic」、お馴染みの曲をテクノ・ポップ風にカバーした「フニクリ・フニクラ」、細野さんが沖縄県の竹富島で見た蛍を思い起こして作ったというガムラン・ゴングを使った美しい音色の「LUMINESCENT/HOTARU(ホタル)」、高橋幸宏氏が叩くタイトなドラムのリズム感をあえて捻じ曲げたようなファンキーな感覚が楽しい「Platonic」、短いフレーズが延々と繰り返されるミニマル・テクノ風の小品「In Limbo」、やはりテクノ・ファンクな「L.D.K」、猫の鳴き声やゴング、あるいはその場にいた人のノイズなど、様々な音をコラージュ・ミックスした細野流のユーモアがあふれる「お誕生会」、YMOのナンバーにも通じる味のあるとぼけたヴォーカルを聴くことができる「Sports Man」、演奏しながら発作的&即興的に録った曲という「Philharmony」、インダストリアルな雰囲気も兼ね備えたアンビエントな「Air – Condition」まで、まさに私的な趣味を存分に発揮させながら、細野さん自身のテクノに関するこだわりをてんこ盛りにした一枚だという気がします。テクノ・ポップとは何か?という問いかけに対して、必ずしやその答えを提示してくれる一枚だというのは言うまでもありません。
それにしても、こういったシンプルなテクノな曲、最近は少ないですね。。。。。

試聴音源はこちらから
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1553301
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不条理音盤委員会 550 O.M.F.O 「Trans Balkan Express」
- 2007/10/26(Fri) -
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Kraftwerkとバルカン半島の音楽が好きな片桐と言います。
と、なればこの二つの音を融合させたO.M.F.O.(Our Man from Odessa)を登場させないわけにはいかないというわけで、パイクマンさんのところでは「We Are The Shepherds」が紹介されていたので、こちらでは2004年の1stアルバムを。。。。このO.M.F.OことGerman Popovさんはウクライナのオデッサ生まれで、その後ドイツ~オランダと移り渡り、その間に中央アジアを放浪したようなのですが、そんな経験を踏まえての胡散臭さ満載の制作活動はまさに拍手喝采と言うべきものでしょう。
タイトル通り、バルカン半島を通過する特急列車という雰囲気の「Trans Balkan Express」から始まり、レゲエっぽいリズムがチャカポコと刻まれるのが心地よい「Gutsul Electro」、ヴォコーダー・ヴォーカルをフューチャーしたエスノ・ワルツの「Dolia」、ケチャっぽいヴォーカルやイサン地方の音楽を連想させるシンセといった東南アジア色が濃い「Tixi Rock」、ブルガリアの舞曲の電子的アレンジと言うべき「Chupino」、やはりバルカン風の舞曲をケーナのような音で綴った「Munteanul 2000」、バルカン・ブラスのチープ・テクノ的解釈の「Money Boney」、ラウンジっぽい感覚(KraftwerkというよりYMOっぽい)の「Sirtaki On Mars」、ペルシア音楽+トリップ・ホップといった感じの「Taras」、
スラブ風(マイム・マイムにも似ていますが・・・笑)の軽快なメロディーの「Magic Marnaliga」、スプーン・ダンス風の楽しげなメロディーが奏でられる「Chachak」、口琴をサンプリングした?「Drimba'n'Bass」、似非中近東風メロディーを大胆にダブ処理した「Cucoo Dub」「Space Hora Dub」まで、チープなエレクトロニクス音といかにもといったバルカン~中近東方面の音の組み合わせに思わずニヤリとさせられてしまう一枚なのでありまして、まさに秋空の下でお姉ちゃんの太腿を観察するのには最適なのでありました。

試聴音源はこちらから
http://www.mp3.de/musik/genre/band/090000/288821/32_114365

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不条理委員会 546 高橋幸宏 「What, Me Worry?」
- 2007/10/13(Sat) -
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高橋幸宏さんの4枚目のアルバム「What,Me Worry?」は前作「NEUROMANTIC」のタイトルとおり神経質的な音とがガラリと異なった抜けのいいブリティッシュ・ポップ感覚と中原中也が好きだという幸宏さんの瑞々しい感性が調和した素敵なラブ・ソングがいっぱいつまったアルバムになっています。そのラブ・ソングもまた空想と現実のバランスがみごとに組み合わされたとてもリアルなもので、聴いていてちょっと胸キュンしてしまいます。レコーディングに参加したゲストも豪華でしたが、このアルバム発表と同時に展開されたツアーには土屋昌巳、立花ハジメ、Steve Jansen、細野晴臣といった気心のしれたメンバーでパッション弾ける演奏をしていたのが懐かしいです。
沢村満氏のサックスを多重録音したインスト小品の「What, Me Worry?」から切れ目なしに続き、Bill Nelsonのギターも心地よいダンサンブルな「It's Gonna Work Out」、切なくなるような歌詞が淡く霞のようなシンセの音ともに歌われる「Sayonara」、Zaine Griffと彼の恋人Ronnyが幸宏さんとともにヴォーカルをつとめるニューロマンティックぽい陰りを感じる「This Strange Obsession」、坂本龍一氏提供でオリエンタル風のメロに穏やかで夢想的なヴォーカルが重なっていく「Flashback」、ちょっとハードなビート感覚が印象的な「The Real You」、シンプルな歌メロにもろ切ない歌詞の不朽の名曲「 Disposable Love」、Bill NelsonのE-Bowがフューチャーされたエスニックなインスト「My Higland Home In Thailand」、明るくポップなテクノ・ポップ・ナンバー「All You've Got To Do」、Bill Nelsonと故大村憲司氏の2本のギターと共に感動的なフィナーレを迎えるThe Beatlesのカバー「It's All Too Much」まで一瞬の隙を与える暇もないほどかなり濃密な音つくりで、今の幸宏さんの路線からすると音が多すぎるといった感もあるのですが、その中に込められた甘酸っぱい思いに発表当時は心がドキドキしたものです。

試聴音源はこちらから
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1553297


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不条理音盤委員会 520 James Figurine 「Mistake Mistake Mistake Mistake」
- 2007/07/18(Wed) -
この時期は仕方のないことなのかもしれないのですが、納涼イベントとかいうものがあって、要はビヤガーデンでの飲み会に他ならないのですが、こういった飲み会という行事は実はひたすら苦痛であって、それならば出なきゃいいじゃん!と思われそうなのですが、一応オフィス内の義務となっている以上は顔を出さないと末代まで祟ってしまうわけで、そうなってしまうと会費3000円は徴収されてしまうわけで、そんな中で納涼というよりは単なる仕事の愚痴と同僚の悪口大会に終始するのは目に見えているわけで、要は口実をつけて飲みたいという連中の他人巻き込み企画だけなのに出席を断れないのは理不尽だなと思いながらも塩ダレの焼き鳥に舌鼓を打っている片桐と言います。

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というわけでPostal Serviceの片割れでもあるDntelことJimmy TamborelloがJames Figurine名義で発表したキャッチーでエレクトロニック・ポップなアルバム「Mistake Mistake Mistake Mistake」です。I'm Not Gunでも知られるテックハウス・アーティストJohn Tejadaが制作に手を貸しているということもあって縦横無尽に飛び交うチープ&ストレンジなテクノ音と軽快なシンセのビートはダンサンブル&スイートな感覚に満ちあふれていて、Erlend Oye(Kings Of Convinience)とJenny Lewis(Rilo Kiley)のゲスト・ヴォーカルによるちょっと甘めのポップ・チューンを効果的に配しながらのパステル・カラー風のテクノ絵巻が繰り広げられていきます。基本的には柔らかくてハート・ウォーミングなエレクトロな音なのですが、さすがにPostal Serviceをやっているというかなんというか、そんなテクノな音を背景にしたつぶやき系ヴォーカルというのもなかなか味のあるもので、時折いきなり80年代NWサウンドになってしまうというのもご愛嬌というものでしょうか。。。。テクノ・ポップに身を委ねてきた人間にとってはあのバンド、このバンドと次々と名前が浮かんでしまうようなまさにテクノの見本市、しかも宅録風のチープな音はシンプルかつ素朴としか言いようがないのですが、先日のI Am Robot And Proudと並んで和み系テクノと勝手に命名しての最近のヘビロテになっている一枚でありました。。。。

試聴音源はこちらから
http://www.cduniverse.com/search/xx/music/pid/7111882/a/Mistake+Mistake+Mistake+Mistake.htm
http://www.myspace.com/jamesfigurine



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不条理音盤委員会 516 Human League 「Dare!」
- 2007/07/04(Wed) -
ちょっと色あせた写真の中でその人は楽しそうに笑っている。その隣には俺が写っているのだが、あいにく俺はバルタン星人の着ぐるみをかぶっているのだ。平日の夕方はスーパーのオリジナル・キャラをかぶっての特売セールの呼び込みのようなものだったが、休日はそれ以外に屋上でのイヴェントやじゃんけん大会も加わった。ウルトラマン・シリーズや仮面ライダー、あるいは戦隊ものといろいろだったが、俺はバルタン星人が一番好きだった。
その人はバイトが終わる頃にフラ~っと現れて、「お疲れ様、これからレコード買いに行くんでしょう?」と言い、俺の日当はそのままレコードに化けてしまっていた。

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Heaven 17との分裂後に6人組として再出発したHuman Leagueが「Boys And Girls」「Love Action」といったヒット・シングルの勢いそのままに満を持して発表したこのアルバムは、それ以前の作品で聴かれたいわゆるシェフィールド系に特徴的な淡々としながらもどこか官能的な暗い世界から脱皮した限りなくポップでダンサンブルなサウンドで一世を風靡した。エレクトロニック・アバと今でも罵詈雑言が絶えないアルバムなのだが、エレクトロニック・ポップの頂点に君臨したことだけは否定できないだろう。大ヒットした「愛の残り火(Don't You Want Me)」も含むこのアルバムでは割とリズミカルでしっかりとしたボトムを持ったベース・ラインを基本に、シンセ奏者が3人もいるとは到底思えないほどのチープでペナペナとした音を幾重にも重ねているのだが、そのサウンドの薄さと反比例するほどPhiil Oakeyの濃密で物憂い歌声が聴こえてくるのである。JoannneとSuzanneのキュートな女性コーラスがなければ、案外重苦しく聴こえるのではなかろうかと懸念するほどである。矛盾するような言い方になってしまうのだが、このアルバムは極めてエレ・ポップ的なカラフルな音に包まれている。しかし、そのカラフルさは人間のものでもなく、無論Kraftwerkが目指したロボット的なものでもない。Phil Oakeyの感情を発露しきれない哀愁漂う歌声とその容貌からも明らかのようにこの音楽はサイボーグのものなのである。

試聴音源はこちらから
http://www.amazon.co.uk/Dare-Human-League/dp/B000025JV9




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不条理音盤委員会 498 Jermook 「Have a Nice Trip」
- 2007/04/22(Sun) -
いわき市生まれで、幼い頃は隣の家にフラ・ガールのお姉ちゃんがいて子供心にも「綺麗な姉ちゃんやなぁ~」などと思っていたことをゆうけいさんのBlogに書いたら、「世界中の素敵なお姉さんシンガー探索の旅はそこから始まったのかも」といういともありがたく、また核心を衝くレスをいただいてみたのはいいものの、そのお姉ちゃんの顔が思い出せない片桐と言います(実家に行けば年賀状がある筈なのですが。。。滝汗)。

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と、いうわけでモスクワを中心として活動してしているアルメニア出身のNick "Ambidextrous" Zavriev (electronics, keyboards)、Sergey "Morkva" Moskovkin (bass guitar, guitar, electronics)、 Arusyak Mirzoyan (vocals) という3人組のユニットJermookのデビュー・アルバムです。ダウン・テンポあるいはトリップ・ホップの範疇に含まれるエレクトロニクス系の音なのですが、いくつかの歌詞が古代アルメニアの伝承詩に由来していることや、出身がアルメニアということもあって中近東フレイヴァーも感じられるのは容易に予想していたのですが、Arusyak Mirzoyan さんのヴォーカル・ワークもまたこのユニットの魅力の一つとなっているような気がします。この手の音で女性ヴォーカルといえばブリストルの狂乱巫女PortisheadのBeth Gibbonsさんの名前がすぐに思い浮かぶのですが、Arusyakさんもそれに負けじとばかりのクリアでありながらシャーマニティックな歌声を披露してくれています。重苦しい音の中から呪文的にも聴こえるヴォーカルが寒々と響く「Mountains」、短いイントロをはさんで、シューゲイザーのエレクトロニカ的な解釈ともいえそうな「Kami」、徐々にヴォーカルがエモーショナルになっていくEnigmaっぽい雰囲気もある「In My Mind」、ノスタルジックな歌メロの「Yars Ur E?」、エスニックな面を前面に打ち出しながらラップもフューチャーした「Ticnicner」、ピアノをメインとしたスローなインスト曲「Walking」、アフリカン・フレイヴァーを感じさせるようなスペイシーな「Orer」、Kate Bush + New Order(どういう組み合わせやねん!)といった「Jamen Antsav」、シューゲイザー風にレイヤーされたギター?のサウンド・スケープが拡がっていく様が心地よい「Mekhavorem」、やはり4ADからCreation、Creationといったレーベルの音をMuteに翻訳したような(これまた無茶苦茶な比喩・・・滝汗)「Be Still My Heart」、スピリチュアルな印象もある「 Нежнее нежного」、電子音が飛び交う中を自由自在に歌っているという感がある「Feathers」まで、緻密にクールに構成されたサウンドと反比例するかのようなArusyakさんの伸びやかな歌声のバランス加減がこれまた一種独特の美学を提示しているような印象もあり、北方つながりでカナダのSarah McLachlanさんの名前も頭をよぎったりするわけです。ググってみてもロシア語のレビューばっかりで読む気にもなれず、とはいうものの買ったのはフランスのCD.Babyだったりするわけなんですが、何故かNap Star Japanでも配信しているんですよね(でもTower RecordでCDは売っていない。。。。)。


http://cdbaby.com/cd/jermook
http://www.myspace.com/jermookband


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不条理音盤委員会 490 Liaisons Dangereuses 「Same」
- 2007/04/05(Thu) -
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DAFのChrislo HaasとEinsturzende NeubautenのBeate Bartelというジャーマン・エクスペリメンタルな男女に狂気のヴォーカリストKrishna Goineauが合流して結成された「危険な関係」を意味するこのユニットは、ジャーマン・テクノというよりはデトロイト方面で再評価されましたね。彼らの「Peut etre... pas」をCarl Craigが「Galaxy」でサンプリングしたことなどは言わずと知れたことなのですが、このアルバムのプロデュースもまたもやConny Plankさんだったりするわけで、KORG MS-20によるアナログ・シンセの太いベースラインをメインに、シンプルで無機的なミニマル・シーケンスが流れる中を実験的とも変態的も言えそうなヴォーカルが交錯する有様は、1980年当時としてはかなり斬新なものだった筈ですよね??
金物系サウンドの中から気の抜けたようなヴォーカルが虚ろに響く「Mystere Dans le Brouillard」、シンプルなベース・ラインにのせて演劇調のChirsのヴォーカルと合いの手のようなKrishnaの叫びが交錯する「Les Ninos Del Parque」、DAF+Neuといったクラウト・ロックの雰囲気満点のシーケンスにもかかわらず、グルーブ感ゼロという荒業の「Etre assis ou danser」、ノイバウテンがシンセを全面的に使ったらこんな音になるだろう…と推定されるインダストリアル・サウンドの「Aperitif de la mort」、タンゴのクラウト・ロック・ヴァージョンながら怪しさ満点の「Kess kill fe show」、まさにデトロイト・テクノとしか言いようがないリズム・パターンとウニョウニョしたベースラインがご機嫌なグルーブを生み出している「Peut etre... pas」、これまたChirsの独壇場ともいえるトーキング・ヴォーカルとチープな電子音の組み合わせがテクノの予兆を感じさせる「 Avant apres Mars」、偏執狂的な笑い声とヴォイスが七変化的なシーケンス・パターンと共に展開していく「Ce macho y la nena」、エクスペリメンタルな音響実験作品といった趣きの「Dupont」、ゴシック的な雰囲気も感じられる荘厳な音処理を施した「Liaisons Dangereuses」まで、音全体が弾けて砕け散ってしまったような中で、正気と狂気の間を揺れ動きながら行き来するような、まさにアブストラクトな雰囲気を堪能できると思います。個人的にはこの作品はめちゃサイケデリックだと思うのですが、いかがでしょうか。。。。??

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不条理音盤委員会 489 I Am Robot And Proud  「The Catch & Spring Summer Autumn Winter」
- 2007/04/03(Tue) -
Seven Starsを愛喫しているのですが、これにはソフト・パックとボックスという2種類あって微妙に味が異なるというのは困りもので、自動販売機で押し間違えたりすると気分がブルーになってしまうので、いつも歩いて3分のコンビニで買うことが多いのですが、いつもよくいるめちゃ美人の店員さんが煙草を買いにきたわけでもないのにレジでの支払いの際に後ろを振り向いてセブンスターを手にするという習性が身についてしまったのには苦笑してしまいますが、その美人の店員さんが20歳にして2度離婚経験&娘一人ありという事実に驚愕している片桐と言います。

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というわけで、これまたmattsmoodさんのところで教えてもらった、トロント在住のShaw-Han Liemによる一人エレクトロニカ・ユニットI Am Robot And Proudの入手困難と言われていた1stアルバム+EPがカップリングされたアルバムが再発されたので速攻でゲット!キラキラ輝くようなエレクトロニクス音、コロコロ転がるようなビート、柔らかで温かみのある生音も絡ませたメロウでファンタスティックなイメージ満点のポップ・エレクトロニカ風味なのですが、そんな中にもしっかりとグルーブ感を潜ませている遊び心のような感覚も楽しい一枚です。mattsmoodさんがこのユニットを評して曰く、「ほんのちょっと坂本龍一 meets 教育テレビ、という印象」という言葉はけだし名言です。
ユニット名から連想されるようにKraftwerkっぽいベースラインや坂本龍一氏の初期のアルバム、あるいはYMOとテクノ・ポップを経験してきた人ならば思わず顔がほころんでしまいそうな微笑ましさも感じられ、しかもデジタル・シンセっぽい印象は少なく(HPを見るとMoog Ⅲ-CやKorg Ms-10の姿も。。。)、おそらくアナログ・シンセで創り上げたのではないかと思われる浮遊感を伴った音の数々には既視感や懐かしさといったようなものさえ覚えます。
もうハマってしまいますね。

My Space.comでは最近の音を聴くことができます。
http://www.myspace.com/iamrobotandproud



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不条理音盤委員会 487 Moebius & Plank  「Rastakraut Pasta & Material」
- 2007/03/29(Thu) -
横手焼きそばにハマってしまった片桐と言います。
そもそもソース焼きそばが本流だと思っていたのですが、世間で評判の「元祖 神谷焼きそば屋」さんの一品を食した後はその美味しさに感動いたしました。ストレートの太麺に半熟の目玉焼き、副えられた福神漬といった一皿に独特の甘みのあるソースがからんだそれはどこか懐かしく、郷愁を感じさせるものでした。

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というわけで、ClusterのメンバーであるDieter MoebiusとConny Plankがタッグを組んだこの「Rastakraut Pasta & Material」は最近では各々一枚ずつ紙ジャケでリイシューされているようですが、元々オリジナル自体が35分にも満たない作品なのでドイツ盤の2in1CDの方がお買い得と言えますね。毎回何をやらかすか楽しみなMoebius先生なのですが、1980年の「Rastakraut Pasta」ではレゲエに挑戦しています。ダブっぽい妙に脱力感あふれる音響空間の中で、これまた奇妙に楽天的で開放的な電子音が飛び交っております。一方の81年の「Material」ではタイトルに相応しく、まるで思いついたメロをそのままレコーディングしたような生々しくもいかがわしい音が繰り広げております。このねじくれた音の中に身を沈めているとまるで自分の無気力な部分や怠惰な部分が増殖していくような錯覚に陥るのですが、それがまた快楽なのでもあります。タイトル通りニュース音声をSE風にコラージュした「News」、歪みきった音処理が独特の雰囲気をもつ「Rastakraut Pasta」、Holger Czukayも参加したフィードバック+電子音の浮遊のみといった「Feedback 66」、ハーモナイズされたヴォーカルも含めてトロピカルなイメージを無理に演出したような「Missi Cacadou」、現在リリースされても全く遜色のないストレートなエレクトロニカ風の「Two Oldtimers」、テープの逆回転やダブ的処理を施した実験的な(というか、このアルバム自体エクスペリメンタルとしか言いようがありませんが・・・滝汗)「Solar Plexus」、偽ハワイアン風の「Landebahn」とここまでが「Rastakraut Pasta」で、シャープで切れのいいリズムに合わせてギターのカッティングが延々続く、まるで「Zero Set」のロック・ヴァージョンのような「Conditionierer」から始まる「Material」は、続くClusterのスロー・ダヴ・ヴァージョンのような「Infiltration」、アナログ・シーケンス・パターンの繰り返しにレイヤーな音が被っていく「Tollkühn」、 Joy Division + Klusterといった重苦しい電子サウンド(Section 25っぽいという噂も。。。一緒じゃん!)が印象的な「Osmo-Fantor」、ドキュメンタリー番組のサントラにでも使われそうな「Nordöstliches Gefühl」で終わるのですが、何はともあれテクノではない電子音楽の真髄の一端を垣間見るようなこの2つの作品は、もうどうしようもないほどユルいとかしか表現できず、ただただこの二人の音響マジックの前に全面降伏してしまう片桐なのでありました。。。。
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不条理音盤委員会 486 Moebius-Plank-Neumeier 「Zero Set」
- 2007/03/28(Wed) -
日本人というものはいろいろ肩書きにこだわったりするもので、それこそどんな役職なんじゃい!と思うようなものも少なくないのですが、先日民俗学的調査を依頼するために訪ねた某県の教育委員会では、担当者以外に3人の上司らしき人も同席したのですが、その名刺には各々「課長補佐」「課次長」「統轄主任」と記されていて、誰が一番偉いのじゃ!と思わず叫びだしそうになってしまった片桐と言います。

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というわけで世間ではテクノの源流とか、ポスト・ロックの元祖とか呼ばれているジャーマン・エクスペリメンタルの名盤である「Zero Set」の登場でございます。言わずと知れたClusterのDieter Moebius、Guru GuruのMani Neumeier、そしてジャーマン・ロック界の敏腕エンジニアだったCony Plankの3人が創りあげたこのアルバムは、当時最先端のエレクトロニクスと音響処理を施し、徹底的に無駄を省いたようなMoebiusによる無機質ながら浮遊感に富んだ奇妙な電子音にManiの躍動感に満ち溢れた生ドラムが絡んでいくという展開に仕上がっていて、ミニマル的な電子の祝祭と原始的で呪術的な陶酔のリズムが交錯していくといったアシッド感覚あふれるものになっています。抑制されたシーケンスと時には同期し、時にはそれを打破するが如く暴れまわる生ドラムという組み合わせは、これまた名盤と言われるHarmoniaの「Deluxe」でも既に実現しているのですが、Harmoniaで多少は感じたヒューマニズムの破片のようなものはこちらでは全く感じずに、無機質な音の羅列といった印象もあります。もっともそんな無機質にも聴こえる音の数々はManiのドラムによって生命を与えられたといっても過言ではなく、このバタバタとしたドラムの音あってこそ、このアルバムがトランシーに響くのであって、そんなトランス感覚をあえてエレクトロニクスでの表現を試みたと見るべきなのかもしれません。無論あくまでも開放的なものではなく、あくまでもそのトランス感覚は聴くものの内側にどんどん入り込んでいくようなもので、一種瞑想的な雰囲気すら漂っているような気もします。

試聴音源はこちらから
http://www.hmv.co.jp/product/detail/733046



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不条理音盤委員会 444 Heaven 17 「Penthouse And Movement」
- 2006/12/03(Sun) -
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ちょっと前にClock DVAを取り上げたのですが、その時にシェフィールド一派の人脈的なつながりを簡単に述べたのですが、そこでも触れていたのですがMartyn Wareさんの名前が出ればやはりHeaven 17でしょうね。彼とIan Craig MarshはAdi Newtonと共に活動していたのですが、AdiがClock DVAを結成してしまったのを契機に新たなヴォーカルを探す必要に迫られてしまい、とりあえず最初に声をかけたのがGlenn Gregoryでした。しかし、彼に断られて白羽の矢が立ったのがMartin Wareのクラスメートで当時病院に勤務していたというPhilip Okayというわけで、ここから超有名グループHuman Leagueがスタートするわけなのですが、この時期をhello nicoさん曰くの「女性のいないHuman League」期と呼ぶわけです。あ~だ、こ~だとやっているうちに、音楽性の対立といったよくある理由でPhilip Okayが名前を引き継いでグループはエレクトリック・アバ時代に突入して「愛の残り火」で一世を風靡する一方で、MartinとIanは再びGlenn Gregoryに声をかけて結成したのがこのHeaven 17というわけで、デジタル・シンセを両手の人差し指2本で弾いた極上のメロディーを幾度となくダビングを重ねたそのサウンドは、しなやかなエレクトロ・ファンクと煌びやかなデジタル・サウンドに満ちていてこの時期のUK NWの作品の中ではトップレベルではないかと思われるほど明るく楽しいタッチに仕上がっています。ギターの小気味よいカッティングやサックスも盛り込んだグルーヴィーな「(We Don't Need This) Fascist Groove Thang」、ゲストのJosie Jamesのキュートなウィスパー・ヴォイスが印象的なエレクトロ・ファンク風の「Penthouse and Pavement」、やはりチョッパー・ベースとシンセ・ブラスが活躍するソウル感覚あふれる「Play to Win」、転がるようなピアノとベース・ソロを前面にフューチャーしながら、ちょっとダークネスな雰囲気も感じられる「Soul Warfare」、ストリング・シンセ主体のテクノ・ポップ風の「Geisha Boys and Temple Girls」、サンバ・ホイッスル風の音を使ったラテン・ポップのエッセンスを盛り込んだ(でも、ヴォーカルはモノローグ風)の「Let's All Make a Bomb」、シェフィールド一派に共通するマシーナリーなビートを持った「The Height of the Fighting」、小刻みなシーケンス・フレーズが繰り返される荘厳なアンセム調の「Song With No Name」、このアルバムの中ではもっともリズムを強調した感のある「We're Going to Live for a Very Long Time」までブラック・コンテンポラリー色の強い旧A面と、比較的エレ・ポップ感覚が濃厚な旧B面とそれぞれ好みが分かれるかもしれませんが、両者共に質が高くマニアックでかつポップな音楽を展開しているという印象があります。ちょっと平板な音つくりという気もしないでもないのですが、この時期を語る上では欠かせない一枚だというのは否定できないと思いますが。。。。。。

試聴音源はこちらから
http://www.cduniverse.com/search/xx/music/pid/1020172/a/Penthouse+And+Pavement.htm
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不条理音盤委員会 438 Dali 「Hectic」
- 2006/11/05(Sun) -
サイケデリックの混沌に浸って陶酔するのは非常に自堕落的な快楽をもたらしてくれるのでありますが、さすがにメイド・カフェでナンパした女の子相手に「E2-E4」を流すわけにもいかず、仕方がないので「Sueno Latino Illusion First Mix」のアンビエント・ハウスでお茶を濁してしまう片桐です。と、理解る人には理解るネタなのですが、どっかの誰かは絶対この面白さは知らないだろうと思ってしまうわけであります。

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というわけで、たまにはPsy-Tranceでも聴いてアッパーな気分に浸ってみようかと Dali (本名 Dalit Eizner) の1stアルバムでも引っ張り出してきたのではありますが、ジャーマン系の哀愁や優雅な路線とは打って変わったグイグイ・ガンガンといったノリはさすがに女性も徴兵されるイスラエル出身ということが良くわかるというもので(謎)、そもそもこのDaliという美人女性はロックバンドのヴォーカルをやっていたそうで、トランスに転身してからも電子音楽一辺倒ではない、ヒプノティックなヴォーカルやとらえどころのない浮遊感あふれる音作りが微妙な余韻を残してくれるということで、これはまさにアノ感覚に近いものがあると思うでありますが、半分は体験できない快楽に瞬時的には物悲しくなったりもするのであります。Psy-Tranceというよりはアブストラクトに近いような印象がある重いリズムとDaliのキュートなヴォーカルがのる「Follow The Signs」、小刻みなシーケンス・フレーズの連続といかにもといった音が挿入される「Feel My Body」、ヘヴィーなギターのリフの断片が飛び交う「Into Madness」、一瞬ルンバっぽい鳴り物に!?と思ったのもつかの間グイグイくるベースと突如として切り取られた如きブレイクに思わずダンスと痙攣を繰り返してしまう「My Way」、トライバルっぽいビートがトリップ・ホップを連想させたと思いきややはり高速ビートで体を強制的に動かされる「Hectic」、ブレイク・ビーツから強引にトランスに持っていく力技に驚いてしまう「Smack Snack (Remix For Terry Poison)」、変則的な拍子にキラキラ系のシンセがかぶる「Connect To The Source」、メインのメロディーの儚さをそのままフォローするかのような繊細な音作りとソウルフルで時にはシャウト気味にもなるDaliとゲストのSilent Hillのヴォーカル・パートの対比が印象的な「Tripop」、トランスよりはロックっぽい感覚が心地よい「Don't You See?」、ジャズ・フュージョン風のSilent Hillのヴォーカル・パートにかなりお洒落なセンスを感じる「Get Your Emotion」まで一筋縄ではいかないような魔術的な音についつい幻惑されてしまうのですが、よく聴くと使われている音色自体はどこかDepeche Modeといった初期テクノ・ポップを思わせるような懐かしくも温かみのあるような音だったりします。それにしてもPsy-TranceやGOAは早いなぁ~~。ハイになる前に意識が吹っ飛んでしまうおぢさんの片桐でした(笑)。

試聴音源はこちらから
http://www.psyshop.com/shop/CDs/hom/hom1cd048.html
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不条理音盤委員会 437 Ijo 「Computer Pop」
- 2006/11/04(Sat) -
つかのまの祝祭の終焉の間際に、別れを惜しんで雑踏の中にたたずみながら、言葉を交わすこともなくただ黙って互いの顔を見つめていた。携帯電話のメールが入り、そこには君からの伝言が映し出される。「また、会おうね・・・?」、僕は照れながら「また会おうね。」と君に返信する。目の前にいるのに口に出せない言葉を代弁してくれる文明の利器に二人で感謝しながら、手をつなぎもせずに駅へと向かった。

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な~~んてね。というわけで「GOOD FORTUNE」のオオシマさんに教えてもらったリトアニア出身のIJOことAudrius Vaitiekūnasさんがネット・レーベルであるStemosから発表した2ndアルバムです。水泡のような音に淡い音が静かに重ねられていく神秘的なイメージを連想させる「Coral Sea」から始まり、ちょっと懐かしい感じのフュージョン・タッチの(それにしてはアヴァン系の鳴り物が入っていますが。。。)「Gartenn」、リズム・パターンが刻々と変化していくさまが面白い実験的な「Minor Street」、かなりギクシャクした変則的な拍子のジャズ・フュージョン・タッチの「Planetary 4」、キラキラとしたシンセのリフレインに軽めのブレイク・ビーツをかぶせた「Nook_148」、女性の声とスクラッチ風の音(共にサンプリング?)をフューチャーしたヒップ・ホップにも通じる感覚が心地よい「Play」、メロウでメランコリックな雰囲気が漂う割と都会的なセンスあふれる「Torroko」、ピアノの音が主導権を握る中で不安感を扇動するような音が次々と現れては消えていく「Song Of Tyree」、タイトルとは裏腹に陰鬱な電子音が交錯していく「Have A Nice Day」まで、手作り感覚あふれるエレクトロニカという印象が強い作品なのですが、全体的に不思議と冷ややかな印象も同時に受けます。まるで霧の中から聴こえてくるような錯覚を覚えるのは彼がリトアニア出身だからでしょうか??

この作品は以下のアドレスからDLできます。
http://www.sutemos.net/en/
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不条理音盤委員会 421 Napoli Is Not Nepal 「Revol Er」
- 2006/10/06(Fri) -
雨音が僕と君との間の溝に流れ込んでいく。約束を解いてみようと思ってみたけれど、それを解き放つ鍵はとっくに見失っていた。とても単純なたった一言を口に出せずに、君はちょっと不機嫌そうに口をとがらせながらアイスティーのグラスを傾ける。僕は君の澄んだ瞳に本当は誰が映っているのか知りたくて、溶けかけた氷を舌の上で転がし続けている。そんな僕の心情を代弁するかのようにNapoli Is Not Nepalの不安げな音が波紋のようにカフェに拡散していった。。。。

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な~~~んてね(爆)。というわけでケルン在住の電子音楽家Hendryk Bayrhofferのソロ・ユニット「Napoli Is Not Nepal」の1stアルバムです。打ち込みをメインとしたサンプリング音源にギターやドラムといった生楽器の音を程よくブレンドしたラウンジ風の軟弱エレクトロニカはもう脱力加減100%といった感じなのですが、全体にジャズ・フュージョン・タッチで統一されているところが心憎いような印象もあります。かなりお洒落な感じに転がるピアノをムードを蹴散らすようなダンボールの底を叩いたようなドラムの音にちょっとがっかりしてしまう「A Night Outside In The Bunker」、変則的なドラムン・コアともダウンテンポ系とも言えそうな「Electrobastard」、ノイズっぽいリズムにスペイシーな音やヴォコーダーがからむラリったYMO ~ Kraftwerkのような「This World Is Sound」、静謐なシンセ音の背後で物を転がしたようなリズム・トラックやフィード・バック音をかぶせたエクスペリメンタル風の「Annie Opper」、タイトル通りのインチキくさいエキゾチック・ジャズもどきの「Bangkok」、割と正統的なエレクトリック・ジャズ・フュージョンの「Selma」、ボサノヴァ+ダブといったおもむきのあるちょっと前衛的な「L'universe C'est Toi 」、やはりタイトルに象徴されるように実験的な「Living In Soundwaves」、ジャズ・ファンクをパロディー化したような「Mohnboot」、中近東風のメロを奏でる端正なピアノとずれまくるドラムが対照的な「Nicoya」、アンビエントなフュージョン・タッチの曲にわざとノイジーなリズム・トラックをかぶせた「They've Never Had The Popsense」まで、ユニット名といい曲名といいどこか自虐的な感じがするのと同様に、サウンドも聴く者の期待をわざと裏切るかのごとく清冽なシンセの上にノイジーな音を重ねたり、音の位相を大きくずらしたりと確信犯的な手法が繰り広げられているのですが、それらの音の陰にHendryk Bayrhofferの薄ら笑いを思い浮かべてしまうような、ちょっとサイコ・ホラー的な感覚もする一枚だと思います(言い換えれば音響心理学のテスト・パターンに近いかも・・・・)

試聴音源はこちらから
http://www.juno.co.uk/products/105386-02.htm
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不条理音盤委員会 425 坂本龍一 「B-2 Unit」
- 2006/10/06(Fri) -

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この人を語るに元YMOという枕詞はもう不要でしょうが、1980年にリリースされた、坂本龍一氏の2ndアルバムがこの「B-2 Unit」です。前作でのポップ感覚を極力排し、当時UKで勃興しつつあったダブ・テクニックを導入しながら、メロディーや曲のいたる部分にノイズを混入させたり、コラージュ的な色彩を加えたりとかなり実験的で前衛的な試みをしていて、一聴するとザラザラとした音の質感や風変わりな音の定位はジャケットに象徴されるようなロシアン・アヴァンギャルドの影響もあるのかとついつい勘繰ってしまう部分もあります。ドタバタとしたドラムとSE風の音のシンセがミニマル的に延々続く「Differencia」、呟くようなヴォーカルにポリリズムのバッキングという「Thatness And Thereness 」、単調なリズムをメインにゲスト参加のAndy Partridgeのギターが細かく加工された音響処理的な作品の「Participation Mystique」、大村憲司の弾くギターが処理によってガムラン風に加工された、ちょっとエスノ風にも感じるダブ的な「E-3A」、YMOの「BGM」に先行するようなくすんだ音色のシンセが印象的な「Iconic Strage」、YMOのワールド・ツアーのオープニング・ナンバーとしても知られるグルーヴィーな「Riot In Lagos」、やはりAndy Partridgeのギター・カッティングの音響処理とラジオの断片をコラージュした中をエレクトロニクス音源が駆け回る「Not The 6 O'clock News」、執拗にフランジングされたシンセの音色と淡々と刻まれるシンセ・ベースによる荘厳な“ヨーロッパの終焉”を示唆した「The End Of Europe」まで、今で言うエレクトロニカの意味合いが濃い曲が続いています。今でこそこういった音楽は珍しくもないのですが、リリース直後にリアルタイムで聴いていた片桐にとっては当初は全く理解できない作品でもありました。どうしてもイメージとしてのテクノ・ポップという言葉に踊らされていた自分にとってここまで音楽を解体したような作品には出会っていませんでしたので。。。。そういった意味でノイズやアヴァンギャルドといった方面に目を向けさせてくれる方向性を示してくれたアルバムでもあります。
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不条理音盤委員会 421 Napoli Is Not Nepal 「Revolv Er」
- 2006/10/02(Mon) -
雨音が僕と君との間の溝に流れ込んでいく。約束を解いてみようと思ってみたけれど、それを解き放つ鍵はとっくに見失っていた。とても単純なたった一言を口に出せずに、君はちょっと不機嫌そうに口をとがらせながらアイスティーのグラスを傾ける。僕は君の澄んだ瞳に本当は誰が映っているのか知りたくて、溶けかけた氷を舌の上で転がし続けている。そんな僕の心情を代弁するかのようにNapoli Is Not Nepalの不安げな音が波紋のようにカフェに拡散していった。。。。な~~~んてね(爆)。

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というわけでケルン在住の電子音楽家Hendryk Bayrhofferのソロ・ユニット「Napoli Is Not Nepal」の1stアルバムです。打ち込みをメインとしたサンプリング音源にギターやドラムといった生楽器の音を程よくブレンドしたラウンジ風の軟弱エレクトロニカはもう脱力加減100%といった感じなのですが、全体にジャズ・フュージョン・タッチで統一されているところが心憎いような印象もあります。かなりお洒落な感じに転がるピアノをムードを蹴散らすようなダンボールの底を叩いたようなドラムの音にちょっとがっかりしてしまう「A Night Outside In The Bunker」、変則的なドラムン・コアともダウンテンポ系とも言えそうな「Electrobastard」、ノイズっぽいリズムにスペイシーな音やヴォコーダーがからむラリったYMO ~ Kraftwerkのような「This World Is Sound」、静謐なシンセ音の背後で物を転がしたようなリズム・トラックやフィード・バック音をかぶせたエクスペリメンタル風の「Annie Opper」、タイトル通りのインチキくさいエキゾチック・ジャズもどきの「Bangkok」、割と正統的なエレクトリック・ジャズ・フュージョンの「Selma」、ボサノヴァ+ダブといったおもむきのあるちょっと前衛的な「L'universe C'est Toi 」、やはりタイトルに象徴されるように実験的な「Living In Soundwaves」、ジャズ・ファンクをパロディー化したような「Mohnboot」、中近東風のメロを奏でる端正なピアノとずれまくるドラムが対照的な「Nicoya」、アンビエントなフュージョン・タッチの曲にわざとノイジーなリズム・トラックをかぶせた「They've Never Had The Popsense」まで、ユニット名といい曲名といいどこか自虐的な感じがするのと同様に、サウンドも聴く者の期待をわざと裏切るかのごとく清冽なシンセの上にノイジーな音を重ねたり、音の位相を大きくずらしたりと確信犯的な手法が繰り広げられているのですが、それらの音の陰にHendryk Bayrhofferの薄ら笑いを思い浮かべてしまうような、ちょっとサイコ・ホラー的な感覚もする一枚だと思います(言い換えれば音響心理学のテスト・パターンに近いかも・・・・)

試聴音源はこちらから
http://www.juno.co.uk/products/105386-02.htm
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不条理音盤委員会 411 I Start Counting 「Fused」
- 2006/08/23(Wed) -
片桐がよく行く中華料理店の親方はユニークな人である。いかにも中華料理店という店構えで、親方もウエイトレスの女性も中国風の衣装なのに、店内では何故か有線のクラブ・ミュージック・チャンネルを流している。回鍋肉と餃子を食しながら聴くラップというのも奇妙なものなのである。さらに頑固というかこだわりというか、メニューの名前で頼んでも相手にされない。この店では食べたいものがあったらメニューに付せられている番号でオーダーしないといけないのである。親方は人の顔を見るなり「片桐さんは今日も3番か7番でしょう?」と訊ねてくるがこの店ではその2品は確かに絶品である。ちなみに3番は「青椒牛肉絲」、7番は「回肉鍋」のそれぞれ定食である。

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というわけで後にFortrun 5~Komputerに発展するDavid Baker と Simon Leonardの最初期のユニットI Start Countingが1989年に発表した唯一のアルバムです。MuteのHPにも詳細は書かれていないのですが、今聴くと笑ってしまうようなチープな打ち込みをメインに、Davidの超低音のヴォーカルが決して聴く人を踊らせるわけでもない歪んだビートと共に流れてくる様や偏執狂的に織り込まれたサンプリング音はどうしてもFad Gadgetを連想してしまいます。また単純なポップ・ソングではないコラージュ的で前衛的な作品が挿入されていることも特徴で、こういった実験的な試行錯誤がNova-Muteを設立した際のダンス・ミュージックに活用されているという面からも、実はこの二人はMuteの社員だったのでは?という推測すらしてしまいます(運転手だった二人が結成したMute Driversというバンドもいましたね・・・。)、インダストリアル・ビートにのせて様々な歌から“Money”というフレーズ(シンディ・ローパーと浜田省吾もサンプリングされています)や何かの曲を抽出してミックスした「Money」、モロDepeche Modeとしか言いようがない哀愁エレポップな「Million Headed Monster」、タイトルは“家”とアシッド・ハウスのダブル・ミーニングになっているそれ風の「House」、EBMを意識したような脅迫的なビートに美しい歌メロが絡む「Modern Sunbathing」、西部劇のテーマとして知られる名曲をストレートにカバーした「Rawhide」、多くの音源をサンプリング・コラージュしてアシッド・ハウスのビートにかぶせた「Lose Him」、インチキくさいジャズ~ラウンジ・ムードに仕立て上げられた「Grassnake」、割と普通のヴォーカル・ナンバーの「Only After Dark(結構格好いい曲だったりする)」、ゴシック風のヴォーカルと複数の音源が交錯する実験的な「Empty Room」、インダストリアルな要素が濃い「Car Theme From "The Blessing"」、チープなテクノ・ポップ・ナンバー(TelexかDevoのようですね)「Birmingham」、きらめくような電子音と打ち込みのリズム・トラックに様々な音の断片が練りこまれた「Listen」、初期Ultravox~John Foxxのような「Admans Dream」まで、いかにもMuteレーベル・サウンドの真髄といったエレクトロニクスを駆使した遊び心いっぱいの音を聴かせてくれます。
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不条理音盤委員会 400 Burhan Öçal & Pete Namlook 「Sultan Orhan」
- 2006/07/30(Sun) -
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エスノでプログレでトランスでネオアコな片桐です。
今回はgoglemanさんからのリクエスト企画第一弾としてBurhan Öçal & Pete Namlookの「Sultan Orhan」を取り上げてみましょう。イスタンブールを拠点としたロマ系のバンド Istanbul Oriental Ensemble を率いるBurhan Öçal とFrankfurt 出身の偏執的なテクノ/アンビエント系のアーティストPete Namlookはこれまでも2度コラボレーションしていて、PeteのレーベルFaxからアルバムは発表されているのですが、3回目のこの作品はレコーディングが終了するまで5年かかったとも言われているようで、よりエスノ色の強いChill-out/Ambient Musicに仕上がっています。またこのアルバムをリリースしているDouble Moonレーベルはこれまた「Jazz。。。The Ethnic Music of this Planet」をスローガンに掲げて、トルコの伝統音楽をベースとして様々な要素をミクスチュアしたアーティストの作品を発表している、非常に刺激的なレーベルです。全編「Nereden Geliyorsun」というオスマン・トルコの君主に対する賛辞をコンセプトとした7部構成の作品で、Burhan Öçal の奏でるパーカッション類にPeteが様々な電子音を絡めながらミニマル状に展開していく「Part Ⅰ」、リズミカルなSazやTanburによるフレーズが心地よい「Part Ⅱ」、Oudのソロ演奏に霞のようなアンビエント・シンセをまぶした小品の「Part Ⅲ」、打ち鳴らされるパーカッションと、かき鳴らされるOudの間を飛び交う電子音と詠唱風のヴォーカルが組み合わされたイスラム色の濃い「Part Ⅳ」、「Part Ⅲ」同様のインタールード的な「Part Ⅴ」を挿んで、インド風のヴォーカル+トライバル・ビートから徐々にクラブ風ビートとへ変遷していく「Part Ⅵ」、スリリングなエスノ系の音をPeteが縦横無尽にエディットした感のある「Part Ⅶ」まで、クラブ映えする音でありながら、音の構築具合は見事までにプログレッシヴしているといった異色の伝統の脱・構築音楽といった印象があります。

試聴音源はこちらから
http://www.doublemoon.com.tr/tr/album_tr.asp?album_id=42

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不条理音盤委員会 389 Ultramarine 「Every Man And Woman Is A Star」(加筆・修正有り)
- 2006/07/18(Tue) -
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80年代後半にSweatboxからノイズ/インダストリアル系の作品を発表していたA Primary IndustryのメンバーだったIan CooperとPaul HammondのユニットUltramarineの1992年の2ndアルバム「Every Man And Woman Is A Star」です。アンビエント・テクノとアコースティック・ミュージックの融合という面ではChina Crisisに共通するのですが、Ultramarineが目指したものは一応ダンス・ミュージックのようです。というもののかなりゆったりしたテンポの曲が多く、ダンスフロア向けとは言いがたいとも思いますが、ちょっとくすんだようなシンセとサンプリングをメインとしたオーガニックなテクノ作品として聴くことも十分可能だと思います。翳りのある雰囲気漂う「Discovery」から始まり、Kevin Ayersの曲をサンプリングしたほのぼのとした「Weird Gear」、ピアノと電子音が交錯するダウンテンポ風の「Pansy」、トロピカルな雰囲気が漂う「Honey」、アコ・ギとヴォイス・コラージュを効果的に配置した「Stella」、アシッド・ハウスを意識したような「British Summertime」、フルートをフューチャーしたアシッド・ジャズ風の「Saratoga」、レゲエ~ダブ風の音処理が楽しい「Geezer」、やはりちょっとダークネスな感じのレゲエ風の音にフルートやハーモニカの音がかぶる「Nova Scotia」、ボサノヴァ~サンバといったラテン風のリズムを借用した軽快な「Panther」、チープなテクノ風ハウス・ナンバー「Lights In My Brain」、当時のクラブ・シーンに色目を使ったようなダンス・ナンバーの「Gravity」、波の音?とストリング・シンセのオーケストレーションが組み合わされたノン・リズムのアンビエント・ナンバー「Canoe Trip」、前曲からのメドレーでWilliam Orbitにも通じるコラージュ・センスを感じる「Skyclad」まで、メロディーやリズムの全てがいたってシンプルに感じられる曲が続いています。このアルバムがRough Tradeから出たことが理解るような気がします。

goglemanさんからコメントをいただいたところ、片桐の文章で一部内容に不適切あるいは誤解を招く表現がありました。
>>「Kevin Ayersの曲をサンプリングしたほのぼのとした『Weird Gear』」
→→「Kevin Ayersの曲の歌詞を引用し、Echo & The Bunnymenの「TheCutter」からのサンプリングと組み合わせた『Weird Gear』」という記述に訂正させていただきます。


試聴音源はこちらから
http://www.mp3.com/albums/60240/summary.html

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不条理音盤委員会 386 Praise 「PRAISE」
- 2006/07/15(Sat) -
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UKでTV・CMなどのコンポーザーとして活動していたSimon GoldbergとGeoff McCormackに南アフリカ出身の女性ヴォーカリストMiriam Stockley(Carl Jenkinsの誘いでADIEMUSに参加したあの女性です)の3人が結成したユニットPraiseの1992年発表の唯一のアルバムです。エスニックな要素をふんだんにとりいれたプログレッシヴ・アンビエント・ハウスがメインで、ダビングを繰り返されて創りあげられた音世界はサウンド・コラージュ的なものであり、純粋なエスノ音楽愛好者からすれば美味しいとこ取り、と揶揄されそうな万国博覧会的あるいは植民地主義的ともいえる英国人の異国趣味が無邪気に発散されている作品です。坂本龍一がアラビック・ハウスに挑んだような「Dream On」、アコーディオンとアコ・ギがヨーロッパ的な音を築くのと対象的にアフリカっぽいMiriamの歌メロが聴かれる「Only You」、タブラのサンプリングのイントロからズールー・ジャイヴ的なコーラスを従えた雄大な曲調の「Brand New Day」、アコーディオンとフラメンコ・ギターが活躍するヨーロピアン・センスあふれるレゲエ風の「Easy Way Out」、ピアノをメインとしたクラシカルな「Solitude」、Miriamが朗々と歌い上げる「Love」、やはりアフリカ的なコーラスを大々的にフューチャーした「Pride」、タイトル通りにいかにもといったオリエンタルなメロディーの「Chinatown」、地中海的な大らかな雰囲気を感じる「So Cold」、アンデス音楽の要素にメロウでジャジーなサックスが絡む「Only You」までいわゆるお洒落系で軽く聴き流せるような曲が続きます。類型としてEnigmaやDeep Forestといった名前が挙げられますが、そういったユニットほど徹底しておらずPraiseにとってのエスノな音というのは当時のワールド・ミュージック・ブームに便乗しただけのものなのかもしれません。書割のようなエキゾティシズムと典型的なハウスのリズム・パターンという構成の中でMiriam Stockleyの声の美しさだけが際立っているような気がします。

試聴音源はこちらから
http://www.imjohn.com/praise/index.htm

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不条理音盤委員会 385 Pylolator 「Traumland」
- 2006/07/14(Fri) -
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嘆いても何も生み出されないので。。。。
いつもgoglemanさんのところで紹介されている電子舞踊音楽に心を魅かれている片桐です。
人を食ったようなチープなエレクトロニクスをメインとした天然ポップのバンド、Der Planのメンバーで、初期DAFにも在籍していたPylolatorことKurt Dahlkeは、グループでの作品の他に5枚?のソロ・アルバムを発表しているのですが、これは「Land」シリーズと銘打たれた連作アルバムの最終作品に相当します。インタビューでは「Neuland」になる筈がいつの間にか「夢の国」になってしまったわけなのですが、ここでは従来のイメージを覆すがごとく、Joerg KempとSusan Brackeenという男女ヴォーカルを迎えてサンプリング・シンセを基本にした最新のダンス・ミュージックやアンビエントな音楽を彼流に消化した完成度の高いテクノ・ポップ風サウンドに仕上がっています。あえてグルーブ感を排除したようなギクシャクとしたテクノ・ファンク風の「The Trophotropical Intoroduction ~ The Trophotropical House」、まるでAORのようなお洒落な音とヴォーカルに怪しいSEが絡む「E.V.E」、インドネシアの首都をイメージしたと思われるエスニックなアンビエント・ナンバー「Djakarta」、トランペット、ピアノといった生音を配したブリティッシュ・ソウル的な感覚の「Whiteness」、Der Planと交流のある日本のピッキー・ピクニックと玖保キリコも参加した幼児性あふれるポップ・ソング「You Me」、エスニックなマリンバ風の音とヴォイス・コラージュをミックスさせたお遊び的ダンス・ナンバー「White Wedding」、大仰な打ち込みサウンドを従えた妙にロマンティックなSusanのヴォーカル・ナンバー「Castles In The Sand」、まるでBurt Bacharachのようなスイートなメロディーの「Ships Without Sails」、やはりフルートをフューチャーしたオリエンタルなシンセが印象的な「Leaves」、メカニカルでクラシカルな構成主義的なインスト曲「Man Ray」、Pylorator的な子守唄とも呼ぶべきような「Sleep Well」まで、彼のイメージからすると結構ストレートな表現になっていてちょっと気抜けしたりもするのですが、大人の夢物語といった趣向のまとめあげられたサウンドの至る所に隠された音の遊びのトーンや不器用にしか生きられない人々の悩みや弱さといった部分に光を照射したような歌詞も含めて、どこか翳りを覚えるようなザラザラとした空気感のような印象を受けるアルバムだと思います。

試聴音源はこちらから
http://www.monoeins.de/monoeins/index.php?option=com_music_engine&task=singleCd&id=106&Itemid=156

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不条理音盤委員会 357 Dhamaal Soundsystem 「Same」
- 2006/05/01(Mon) -
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USAには様々な地域出身者のコミュニティが存在するのは承知の通りなのですが、このDhamaal Soundsystemはサン・フランシスコ周辺のインド系、パキスタン系住民をメインとしたクラブ系ユニットです。インド伝統音楽を学んだ者から、DJや映像作家も含んだ17名のこのユニットは単に自分たちの身近な音楽をエレクトロニクスと結合させたというわけではなく、しっかりと伝統音楽をリスペクトした姿勢でクラブ・ミュージックを楽しんでいるような気がします。打ち込みがリズムの基本とはなっているのですが、タブラの奏でる小刻みなリズムを決して殺すわけでもなく、微妙に揺れるようなトランス感覚が、電子音によって更に増幅されていくような印象さえ覚えます。ドラムン・ベースのせわしないリズムの上をアンビエントな電子音とシタールとタブラがミニマル的に舞う「R/evolution」、サイケデリック・トランスに近い雰囲気もある「Oppaari」、スペイシーな音とカッワーリー?を組み合わせたダウン・テンポ~ダブ風の「Chandraya」、極上の瞑想的なトリップ感覚を招くこと間違いなしのフリーキーな「Z Motion」、ドラムン・ベースが主導権を握る中でカッワーリーが音の定位を変えながら延々続く「Folklore」、タブラが打ち鳴らされる中をアンビエント・ハウスのリズムが淡々と進んでいく「Tazan Lookout」、ガザル?ぽい女性ヴォーカルをフューチャーしたゴア・トランス風の「Twilgiht Creeper」、ダブ風に処理された様々な音が交錯していく「Chalan」まで、思ったよりはエスノ色が濃いわけではないのですが、不思議に極彩色にならないモノクローム的なサイケデリックの音処理が、エレガントな快感を呼び起こしてくれるような感があります。UKエイジアンのホットで強烈なメッセージ性と比較して、洗練されたクールでインテリジェンスな側面が際立っているような感もあります。

試聴音源はこちらから
http://cdbaby.com/cd/dhamaal

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不条理音盤委員会 353 Yellow Magic Orchestra 「Technodelic」
- 2006/04/25(Tue) -
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テクノ・ポップという言葉で世間を席巻したYMOは1981年発表の「BGM」でこれまでのファンを突き放すかの如く、UK-NWに直結したようなくすんだ音色のシンセ・ポップを展開したのはご承知の通りだと思います。この時点でYMOの3人はこのプロジェクトの終焉を目指し発表したのがこの「Technodelic」だったと個人的には思います。坂本龍一氏の主導権の下でデジタルであろうが、アナログであろうが、楽器であろうがなかろうが音の出るものを素材としてポップ・ミュージックに仕立てあげる方法論は、松武秀樹氏の手作りのサンプリング・マシーンOrangeを大々的に導入することによってかなり硬質なイメージを覚えます。確かに一聴するとミニマル的なメロディーは単調でかつ強引に感じられますが、全体の音像としてはアバンギャルド的なセンスと無国籍風の音が微妙なバランスを保ってミックスされた極めてハイブリッドなものではないかと思います。高橋幸宏氏のThe Beatlesのような歌メロとやはり笛のようなシンセで奏でられるメロディーはTechno+Psychedelicというコンセプトに相応しいとしか言えない「Pure Jam」から始まり、サンプリングによるミニマル・フレーズが複数交錯する中でケチャまで展開される「Neue Tanz」、いかにも幸宏らしいメロに金属音や坂本氏のピアノ(サンプリング?)が絡むニューロマンティック的な「Stairs」、変な口三味線と変なナレーションが舞う中で独特のハネルようなリズムとファンキーな細野氏のベースが活躍する「Seoul Music」、シンプルで哀愁漂うフレーズが耳に残る「Light In The Darkness」(ドラムと共に鳴っているブリキ缶の音がまた心に響きます)、YMOのアルバムのお約束であるおふざけ系の「TAISO」(ヴォーカル部分はやはりBeatlesぽいですが。。。)、いかにも細野氏らしいエスノ・アンビエントな「Gradated Key」、手弾きとサンプリングが乱れ飛ぶ中で幸宏氏のポップな歌メロが心地よいテクノ・ポップの王道路線である「Key」、現代音楽的なミニマル・フレーズを幾つも組み合わせたミニマル・ポップの極致ともいえる「Prologue」、工事現場で録音した重厚なサンプリングをメインに、Prophet-5を複数ダビングしたメロディーが美しく、まさに最後を飾るべき名曲「Epilogue」まで重厚な音作りでありながらも決して重苦しくならない、どこか突き抜けた明るさのようなものを感じるアルバムだという印象があります。
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不条理音盤委員会 290 Section 25 「From The Hip」
- 2006/02/05(Sun) -
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所在不明のバンドを探すのが好きな片桐です……(-。-) ボソッ。
Factoryレーベルに所属していてNew Orderの弟分と呼ばれていたSection 25が1984年に発表した3rdアルバムです。Vincent&Larry Cassidy兄弟を中心としたこのユニットはこれ以前の「Always Now」「Key Of Dreams」では陰鬱なエレポップ風サウンドを展開していましたが、このアルバムにおさめられた「The Process」「Inspiration」「Looking From A Hilltop」といったシングル曲をBe Music名義でNew OrderのBernard Sumnerがプロデュースをしたことからダンス・フロアを中心にブレイクします。夢みるような美しいキーボードとシンプルなビート、それにモノローグ調のヴォーカルといった傾向はやはりJoy Dvision + New Orderを足して2で割ったような印象がありますが、ひしゃげたようなビートの導入の仕方が風変わりな気もします。寒々とした音色のギターのアルペジオと透明な音色のキーボードが徐々にアンセムを奏でていく「The Process」、初期New OrderそのままのサウンドをAngela Flowersが舌足らずに歌う「Looking From A Hilltop」、Neu!やCanといったクラウト・ロックに通じる部分を感じる「Reflection」、The Bugglesのようなチープさあふれるテクノ・ポップナンバー「Prepare To Live」、単調な打ち込みビートにギター・ノイズが絡む「Program For Light」、かき鳴らされるギターとピアノが憂鬱に交錯する「Desert」、和太鼓のようなビート感覚と不安感を煽り立てるようなシンセ音、ギター・ベースの組み合わせが神経症的な「Beneath The Blade」、邦楽のようなシンセ(琴、笙を意識している??)にVincentのモノローグ風のヴォーカルがメインの和風New Orderといった感じの「Inspiration」、OMDのような(そう言えば彼らもデビューはFactoryでした)「Beating Heart」、エスニックな雰囲気もする「Back To Wonder」、テクノ化したTalking Headsのような「Crazy Wisdom」、歪んだ性急なダンス・ナンバーの「Dirty Disco Ⅱ」、タイトル通りギターとフルート、VincentとAngelaの声によるメランコリックな「Guitar Waltz」までどこか透明な理性の中で狂気が渦巻いているような印象があります。とここまで片桐はLTM-CD2314盤を聴いてレビュってきたのですが、現行の2414盤では「Inspiration」以降の曲が違っています。2414盤では「Looking From a Hilltop (12" Restructure)」「Looking From a Hilltop (12" Megamix)」「Dirty Disco II,(Pre-Mix)」「Beating Heart (12" Remix)」 「Back to Wonder (12" Version)」「Beating Heart (12" Vesrion)」が収録されているようですが、こういう編集の仕方はマニア泣かせですね(笑)。

試聴音源はこちらから
http://www.mp3.com/albums/40632/summary.html
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不条理音盤委員会 265 Fiamma Fumana 「Home」
- 2006/01/10(Tue) -
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イタリアのEmilia Romagna県を活動の拠点としているケルティック・イタリアン・バンドFiamma Fumanaが2003年に発表した2ndアルバムです。元々トラッド・バンドでアコーディオンを担当していたAlberto CotticaがFiammaのヴォーカルに惚れ込んで、地元の伝統音楽とエレクトロニクスの融合を目指して結成されたユニットのようで、今回は前述の二人にLady Jessica Lombardi (bagpipes , flutes, bass, vocals)とMedhin Paolos (live electronica, loops, vocals)を加えた4人でこのアルバムが制作されています。一言で表現すればハイブリッドなセンスあふれる音楽なのですが、決してトラッドを形式的に借用したのではなく、伝統的音楽の先人をゲストに迎えて、彼らの演奏を効果的に配していることからも、土地に根ざしている伝統というものに対する深い愛情と敬意がうかがわれる作品であるのは言うまでもありません。ハンド・クラップに乗って軽快なジグ・チューンと掛け合い風のヴォーカルが楽しい「Marìdem」からスタートし、アラブ風の香りもするアコと伸びやかなFiammaのヴォーカルが聴かれる「Mercy is dead」、バグ・パイプにスクラッチ風のクリック・ノイズがかぶる斬新なインスト曲の「Girometta」、イタリアというよりはスペインに近い感触のアコ・ギが耳に残る「A vòi tòr marì」、つい小川美潮の名前が連想されるゆったりとした曲「La mondina」、ダブ的な音処理がアコースティックな音と交錯する「Mixedblood」、テクノ・ポップ的な音の上をフルートが自由に舞うわらべ唄風の「Balla!」、アコとフルート、バグパイプがたたみかけるジグ風のメロをスクラッチ音が煽り立てる「The blackbird」、インダストリアルなサウンドを背景に、美しいメロのワルツをFiammaが歌う「The hunter」、女性コーラスを配した荘厳な雰囲気すら漂う「Bella ciao」、サウンド・コラージュを駆使した、このアルバムの中では最もアヴァンギャルドな印象のある「Home」まで、時にはちょっとやり過ぎではないかと思うほどのエレクトロニクスの導入もありますが、最近のエスノ・ビートとは一線を画した頑固職人の一品という趣きもあります。3人の女性メンバーが美人だというのもまた嬉しい限りです……(-。-) ボソッ。

彼らのHPはこちらから
http://www.fiamma.org/fiammafumana/index.cfm
試聴音源はこちらからも可能です。
http://fiammafumana.calabashmusic.com/

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