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不条理音盤委員会 600 MDMA 「Same」
- 2009/01/18(Sun) -
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どんなジャンルのアーティストにもそれぞれ亜流みたいなグループが存在する。
The CureにはThe Essenceとか、Cocteau TwinsにはLOWLIFEといった具合なのであるが、そういったバンドの音を聴いていると呆れて笑い出しそうになるほど本家本元の音を忠実にコピーしている。それをパクりというかリスペクトと呼ぶべきかは評価の分かれるところであるが、不思議なことにそういったバンドのファンはオリジナルの音をよく知らないままにハマっていたりするので、バンドそのものにはさほど売れなくとも根強いファンがいたりする。一方で同じようなことをやっていても大して評判にもならず消え去ってしまったものも多いのは言うまでもない。
と、長々と前置きしたのであるが、このMDMAとは、EBM台頭期から活動している息の長いユニットCassandra Complexの初期メンバーだったKeith LangelyとJez Willis、それにJezの兄弟であろうRaeとScottによる4人組のユニットである。これは1989年に彼らが幾枚か発表しているシングルを集めたコンピレーション盤である(オリジナルアルバムは制作していないようだ)。MDMAが編み出す音はプログラミングされた音にゴシック・サイケ風の深いヴォーカル、それにハード・エッジなギターというもので、それは脱退してきたはずのCassandra Complexとは瓜二つであって、強いて言うのであれば、ドラムがエレクトリックか否かとかヴォーカルの声質はMDMAの方に軍配があがるといった程度である。多分ブラインド・テストを試されたら両者の聴き分けは難しいであろう。そもそも二人が何故に脱退したのかの理由も知らないのであるが、わざわざ似たようなことを敢えてやり続けてきたことにはある種の尊敬すら覚えてくる。
Youtubeに彼らの「Evidence」があったので挙げておく。興味がある方はCassandra Complexと聴き比べてみるのもよかろう。


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不条理音盤委員会 597 Gerechtigkeits Liga 「Hypnotischer Existenzialismus」
- 2009/01/09(Fri) -
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SPKの「Machine Age Voodoo」はインダストリアルの文脈ではなくEBMの系譜として聴けば結構面白いものであるということに気づいたのは、巷でそういう音楽が流行ってからであって、Nitzer EbbとかGreater Than OneとかはたまたNine Inch Nailsに至るまでこりゃ「Metal Dance」の複製じゃないかと思ってしまった片桐と言います。
SPKそのものはあまり好きではなかったので、ハーシュ・ノイズがビシバシのSPKが宗旨変えしてメジャー戦略を図ったものの見事に玉砕してしまったのに関しては、ある意味予想通りの展開と納得したのですが、そんな時期にリリースされたのがこのドイツ出身のTill BruggemannによるGerechtigkeits Ligaの1stアルバム「Hypnotischer Existenzialismus」です。リリース元はSPKが主催するSide Effectsから。自身の所有するレーベルZyklus「The Games Must Go On」という12”と多くのカセット作品を発表していたこのユニットはわざわざSide Effectsに所属していることからも理解るように完全に初期SPKフォロワーです。リズム・ボックスを淡々と鳴らし、エフェクトされた低音のヴォイスや電子ノイズ、メタル・パーカッションを絡ませたその音響世界はSPKの「Information Overload Unit」そのものなのですが、SPKとは異なり反キリスト教的観念を伴ったリチュアルな歌詞やそれに迎合するごとき中近東的な音階を使用したり、トライバルなリズムを挿入したりとヨーロッパ世界を徹底的に冷視するがごとき野蛮なノイズを羅列させていたのがちょっと印象に残っています。またそういった路線と並行して奇妙に歪んだポップさが不思議な躍動感を伴っているというノイズ/インダストリアル系の中でも一風変わった作風でした。
って、過去形で書いてしまいましたが最近復活してUKを中心に活動しているようです。

試聴音源(というか彼らの音)はこちらから
http://www.myspace.com/gerechtigkeitsliga
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不条理音盤委員会 596 Last Few Days 「Pure Spirit and Saliva」
- 2009/01/08(Thu) -
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ノイズ/インダストリアル系のグループではE..Neubautenと並んで日本では人気が高い23 Skidooなのですが、ENはともかくとしてどうして23 Skidooがこれほどまでに高く評価されて、またまたAmazonでは信じられないような価格で彼らの作品が取引されているのかちょっと理解できない片桐と言います。と、言いつつも彼らの叩き出すプリミティヴなビートと奇妙な色彩に縁取られた怪しげな音は結構好きなので、オリジナル盤は大抵持っていたりするのですが。。。。滝汗。
と、いうわけで23 SkidooのメンバーでもあるFlitz CatlinとDaniel LandinにSi Joyce、Keir Wahidといった面子が集合したLast Few Daysが1986年に発表した唯一のアルバム「Pure Spirit and Saliva」です。この方たち、スロベニアの音楽集団Laibachと共にヨーロッパ・ツアーを行い、彼らとの連名のカセット作品も発表しているようなのですが、そういう経緯もあって彼らの作り出す音は出身母体の23 Skidooをよりシンプルにしたような土着系ファンクネスの要素と毎度お馴染みの神秘主義的色彩に加えて、Laibach独特の強烈な音響空間処理を伴ったバロック的な破壊音を伴うといったもので、ある種の宗教的な雰囲気が漂う中で脅迫的に歪められたヴォイスが絡むという方向性はCurrent 93やNWWに通じるものがあるような気がします。ちなみにこのアルバムは83~84年にかけてのツアーのライブ音源100時間余りを編集したものとインナーに記されていますが、流れてくる音はライブというよりはまるで儀式のようなおどろおどろしいものですので、そういう方面苦手な方にはお薦めできません。

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不条理音盤委員会 579 P.D 「Inweglos」
- 2008/06/24(Tue) -
その人がアール・グレイではなく、アイリッシュ・ブレックファーストを注文するときは決まって機嫌が悪い日だった。
しかも、濃いめに淹れたミルクティーというのだから最悪だ。
もっとも不機嫌の理由は些細なもので、せいぜい長い髪が湿気でまとわりつくとかお気に入りのベルベットのリボンの結び目の形がうまくいかないといった程度なので、こっちとしては彼女の気が和らぐまでひたすら待つしかなかった。
彼女の細くて柔らかくて長い髪も好きだったので、邪魔だったら切れば?とは言えなかった。その一言で即座に席を立って美容院でバッサリ切るのが目に見えていたからだ。

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と、いうわけでRalf Wehowskyが結成したジャーマン・エクペリメンタル最初期のバンドP.Dの1980年の伝説的な1stアルバム「Inwegols」。後にP16D4へと発展していくこのユニットの作品はドイツで最初のカセット・レーベルの一つWAHRNEMUNGEN(これまたP16D4と共にSELEKTIONへ拡大)からリリースされたのだが、多分持っているLPは再発盤か盤起こしのブートレグだと思う。ただ近年再発されたCDと聴き比べても音像そのものにはさほど変わりはない。もともと極めてチープな音だからである。全編を通じて明確なメロディーのようなものは存在せず、電子ノイズとテープ・コラージュが駆使された実験的なフリー・ミュージックが展開されている。意味もなく律動を刻むリズム・ボックスに合わせて様々な音が左右に飛び散っていくだけなのだが、それはアート感覚とブラック・ユーモアの視点を兼ね備えた極めてシニカルな目線がある。P.Dというユニット名は「Progressive Disco」の略語らしいが当然のごとく踊れるわけもなく、アヴァンギャルドに満ちた音の中から弛緩しきったヴォイスが挿入され、非現実音がその緩んだ空気を引き締めるべき鳴らされるだけである。それでも、まだこの頃のRalf Wehowskyは音楽を構築しようと試みている。様々な断片を苦労してつなぎ合わせたそれらの音は一聴するとミュージック・コンクレートの追随にも思えてくるのだが、アンチテーゼを主張するまでにはいかなかったようである。これ以降、彼は他人の音楽を一度ズタズタにして再構成するといったいわゆるエクスチェンジド・ミュージックへと進化していくことになるのだが、その過程となったユニットP16D4についてはまた別の機会に述べようかと思う。
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不条理音盤委員会 558 のいづんずり 「人間は金の為に死ねるか」
- 2008/03/12(Wed) -
よく「天然ボケ」と称される人がいますが、アシスタントの美由紀ちゃんも絶対そういうジャンルに分類されるのには間違いなく、それでいて本人はそれを認めたがらずに、「今のボケは計算して言ったので、天然ではなく人工化合物ボケです」とか「いつか、これを言おうと思っていたので、これは養殖ボケです」とか、強気な発言を繰り返しているのですが(笑)。。。。。。。

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と、いうわけで京都を拠点として活動していたのいづんずりが1986年に発表した2ndアルバム「人間は金の為に死ねるか」でございます。こののいづんずりというバンドというかユニットは、初期は「日本のノイバウテン」とかいう異名を持つ過激なステージングで有名だったそうですが、85年にテレグラフから出した「抱擁」の頃には、ゲストに戸川純を迎えて日本的・土俗的な民謡や祭囃子風の音にインドリ・イガミのハイトーンの奇妙奇天烈なヴォーカルが被るという音になっていました。この2ndアルバムでは若干のメンバー・チェンジがあり、インドリ・イガミ(Vo)、福田研(B)、鰐好吾郎(管楽器)、田馬田-M(G)、マーガレット・サガネ(Dr)という5人にお囃子連と称するこのグループのファンの女の子3人がコーラスで入るという編成になっていて、サガネさんのフロア・タムを中心とする重苦しくも土俗的なビートを中心にギターと各種管楽器が乱れ舞う中で、どうでもいいようなナンセンスさあふれる(時にはエロエロも)歌詞が歌われるといった具合のいかにも関西アンダーグラウンドの一翼を担っていたというこのバンドの面目躍如たる部分が全開になっています。ヴォーカル・パートが実は一番面白くないのですが、バックで思う存分不可思議なフレーズで暴れまくる田馬田-M氏のギターのアヴァンギャルドさはGang Of FourのAndy Gillに匹敵すると思いますし、フリーキーに吹きまくる鰐好さんのサックスもまた当時のインディーズ界にあっては異色のものだったのではないでしょうか?このバンド、田馬田氏の話によれば、「イガミくんがバンドを去る前の最後のライヴは印象に残っている。あれは京都芸大の学園祭でのこと。学生達が模擬店をやってたんやが、そこでイガミくんは酒を呑みまくってベロンベロン。のいづんずりの演奏中、全く歌えずステ-ジ上で眠りこけてしまった。僕らの後で少年ナイフが演奏したんやけど、イガミ君はその間中ステ-ジ上で眠ったまま(笑)。全員一致で「これはクビにするしかない」と。ベースの福田君がリード・ヴォーカルを担当して、そのまま活動を継続したんやけど、しばらくしてドラムのサガネさんも辞めてしまった。すべてがバラバラになりつつあって、僕も結局辞めた」とのことで空中分解してしまいました。
当時、インディーズ系では色々と面白いバンドがいましたね。Fool’s Mateとか宝島を見て三軒茶屋の「フジヤマ」に走ったものです(笑)。今となっては懐かしい時代かも……(-。-) ボソッ。
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不条理音盤委員会 515 Zoviet France 「Look Into Me」
- 2007/07/03(Tue) -
ちょっとした出張の筈だったのに、出先でついつい本業以外のことで盛り上がってしまい、ファミレス系焼肉店で晩御飯を食べた片桐と言います。その店に入って目が点になったことがありまして、それはボックス席で女子高生が制服のまま友達と二人で焼き肉を突っついていたということでありまして、別に制服姿の女子高校生が焼肉を食ってはならぬという法度も存在しないわけですが、テーブルの上にはカルビやらミノやらタンやらの大皿が並んでいて、それを次々と焼いては口にするという光景が結構迫力満点でチョイとビビった次第です。

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というわけで、イギリスはNewcastle出身のポスト・インダストリアル・ユニットZoviet Franceが1990年に発表した14枚目のアルバム「Look Into Me」です。このユニットはかなりの数の作品を世に送っているわけなのですが、初期の頃のカセット作品は木の板や布紙、あるいは陶器というジャケット?に入っていて、場合によってはカセットが取り出せないとか、保管に非常に邪魔くさかったということでも有名なのですが、今となっては全作品全てCDで聴けるようになったというのですから、世の移ろいも結構捨てたものじゃないなぁ~というような気がします。まぁ、そういうユニットですから、当時はメンバーの名前やタイトルといったインフォメーションも皆無だったのですが、これまた自身のWebで面子を紹介したりしていて、このアルバムではBen Ponton、 Mark Spybey 、Robin Storeyの3人が制作に関わっているようです。元々オリジナル・インダストリアル・サウンドの実験精神を継承しながら輪郭の不明瞭なハーシュ・ノイズ的な音を出し続けてきた彼らですが、このアルバムでも基本的には土俗的な要素をエレクトロニクスで翻訳したようなコンセプチュアルな音響工作的なトラックが主体となっていて、そのアンビエントに構築された高次元的な感覚は中期NEに共通するような印象があります。様々な非現実的な音をコラージュし続けた、いかにも彼らしい24分にも及ぶノイズ・マンダラ的な大作「Cair Camouflet」でこのユニットに対する評価は個人的には★★★★★の片桐なのですが、もうこの段階で大半の人は聴くのを諦めてしまうのは間違いないと思います。続く「LevenSwitch」は教会音楽を連想させ、女性の呟きをひたすら重ねていった「At The Moment」、エフェクトをかけた鳴り物が闊歩する「Fidgety Foot」、ヴォイス?に極端なエコーをかけて不安を煽り立てたあとで、突如として笛の音(軋み音かも・・・)が挿入される「Low Creeper」、脈動的なパーカッションに子供の声にように聴こえる変調されたヴォイスが絡む「Melangell」、ヴォイスのループが自由に音像の定位を変えていく「Look Into Me」、エスノ的な音をテープ処理した「Amadan」といった具合にある程度同じ素材を使いながら、それに様々な加工を施した一種のミュージック・コンクレート的な意味合いも含む作品なのですが、当然の如く万人にお薦めできるものではありません。
でも、鬱のときに聴くと結構救われる気になるのですが。。。。。


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不条理音盤委員会 493 Helena Espval 「Nimis & Ark」
- 2007/04/12(Thu) -
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昨年ちょっと話題になったフリー・フォーク勢の中でも評価が高かったEspersなのですが、そのアルバムの中で独特の浮遊感をもったチェロの音が幽玄さやミステリアスな雰囲気を醸し出していたような気がします。そんなEspersのチェロ奏者Helena Espvallさんのデビュー・ソロ作がこの「Nimis &Ark」です。元々スウェーデン生まれのHelenaさんは様々なローカルなロック・バンドでチェロやギターを弾いていたようですが、2000年にアメリカ・フィラデルフィアに移住してからはEspersへの加入と同時にFursaxa,、From Quagmire、Samara Lubelski、Pauline Oliveros、, Sharron Krausといったアーティストとのセッションを重ねていくようになります。そこで得た多くの音楽的な経験をフィードバックさせて完成させたのがこのアルバムで、Geroge Koreinのプロダクションのもとでマジック・リアリズム的ともいえそうな聴く物を翻弄するが如き摩訶不思議な音響空間を創出してくれました。
ギターとチェロが自由に飛び交うフリー・ミュージック風の「Idioblast」、チェロとストリングによるクラシカル(かなりダークですが。。。)な「Kretslopp Av Blod Och Stjarnor」「Tidepools」、ガムランを模したような「Nimis & Ark」、ソロのチェロによるインプロゼーション的な「Certainty of the Neverseen」、 金属的な音色の単音のギターやキーボードが東南アジア的なメロをミニマル的に繰り返す「Multiplication Broklen And Restored Part1」、タイトル通りに不安を誘うように音程を激しく上下させてチェロが緩急自在に走り回る「The Straight Line Leds To Hell」、琴のようなシンセの音と幽玄で東洋的なヴォーカルが聴かれる「Mar Amarga」、スエディッシュ・トラッドをアシッド漬けにしたようなチェロ独奏曲「Purgatory Chasm」、Part1よりサイケデリック度が濃くなった「Multiplication Broklen And Restored Part2」、やはりトラッドをドラッギーに解釈したような「Vortex」まで、あえて攻撃性を前面に出したかのようなチェロのささくれ立った音を中心に、荒涼たる音の世界が繰り広げられているような気がします。Helenaさん自身の製作意図は不明なのですが、このアルバムの奇妙な幻視空間に映し出されるもの全てが捻じ曲がっていたり、逆さまだったりするという、まるでサルバドール・ダリの絵画に通じるようなものがあるような気もします。

試聴音源はこちらから
http://www.myspace.com/helenaespvall
http://cdbaby.com/cd/helenaespvall


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不条理音盤委員会 472 ESPLENDOR GEOMETRICO 「Mekano Turbo」
- 2007/03/01(Thu) -
最近気が滅入っている片桐と言います。
そんな時にはスペインの電子ノイズ系ユニットであるESPLENDOR GEOMETRICOのCDを聴くと結構気分も上向きになってくるような気がします。このユニットはArturo Lanz、Gabriel Riaza、Juan Carlos Sastreという3人組で80年頃から活動を開始していたようで、初期の頃はDevoやKraftwerkといったテクノ・ポップに影響を受けたと思われる反復するリズム・ボックスに電子ノイズや様々なコラージュが組み合わされるというジャーマン・ノイズっぽい音でしたが、徐々に規則的な金属系インダストリアル・サウンドを前面に打ち出すようになり、より簡素化したチープなエレクトロ&インダストリアルなビートが延々続くといったまさにテクノイズといった音に変貌していきました。そういった音楽性の変化に伴って、現在のメンバーはArturo Lantzのみになり、ライブの際にはサポートを得て活動しているようですが、それと前後するように1990年からはMost Significant Beatというユニット名でメカテクノ・ミュージックの方面にも進出しているようです。最近では極めて入手困難とされていた初期音源が3枚組LPで再発されるといった具合に多少は注目を浴びているような傾向もありますが、その独特の錆びたような音色はやはり一般向けとは言いがたいですね。

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この1988年に発表された「Mekano Turbo」ではそんな彼らの音楽性の過渡期を象徴するが如く、従来のマシーナリーなビートを基盤としながらも、大げさとも思えるなヴォイス・パートやアラビア~イベリア半島のトラディショナルな音楽のコラージュ、それにトランスやトライバル・テクノに通じるようなリズムの導入と、かなり大胆なアプローチを試みていたりするのですが、根底にある赤錆を撒き散らかしたようなインダストリアル感覚は純粋に保持しているといった印象のある名作に仕上がっています。APHEX TWINも影響を受けたといっても過言ではない早すぎたイベリア半島の未来派音楽ともいえる彼らの作品は前述したように時期によって多少の差異はあるものの、どの作品からも全くポジティヴな感情というものが感じられないのも、また戦略の一つなんだろうとついつい感心してしまいます。

試聴音源はこちらから
http://www.geometrikrecords.com/esplendor/i_index.htm




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不条理音盤委員会 423 Clock DVA 「Buried Dreams」
- 2006/10/04(Wed) -
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1970年代後半に遡れることが可能なイギリス・シェフィールドを拠点とした偏執的にエレクトロニクスとダンス・ビートを合体させたClock DVAが1989年に発表したアルバムです。このユニットは基本的にはAdi Newtonのものと言ってもよいと思うのですが、最初期のDead DaughtersにはMartyn Wareと Ian Craig Marshという後にHuman Leagueを結成するメンバーも在籍していたましたし、またCabret Voitareのメンバーも初期には参加していました。そういうメンバー変遷からもわかるとおり、キャブスの影響の強いインダストリアル系の音から徐々にダンスビートを強調するようになってきた彼らは、機材の発達と共にヒプノティックかつ荘厳なデジタル・サウンドを目指すようになってきました。このアルバムではちょうど方向性としては過渡期に相当し、音響工作的な要素も取り入れた重厚なムードが支配する作品に仕上がっています。重苦しいベース・ラインの上にAdiの呪術的なヴォイスと女性の喘ぎ声がかぶる「Buried Dreams」、悪夢をそのまま音像化したようなノイズ感覚あふれる「Hide」、電子音が飛び交う中で何かを訴えるようなAdiのヴォーカルが印象的な「Sound Mirror」、クラシカルなフレーズを挿入した荘厳な曲調の「Velvet Realm」、単調なリズム・パターンの底からAdi Newtonが死について延々と語りかけてくる「The Unseen」、かなりポップな電子系の音とカミュに触発されたという歌詞のアンバランスが面白い「The Reign」、ミニマル・テクノ風の音に各種のコラージュを組み込んだ「The Act」、ハードなテクノ音とインダストリアル・サウンドの融合を聴かせる「The Hacker」、純粋にCabaret Voltaireのエピゴーネンと化した感のある「Connection Machine」、性行為のライブ録音にシンセをかぶせただけの「The Sonology Of Sex I 」、前述のPart1の声の部分を変調させて、デトロイト・テクノ風のビートをミックスさせた「The Sonology Of Sex II(Le Comtesse De Sang)」、PV用にかなりインダストリアルな音をソフトに加工した「The Hacker (video mix)」まで、ポスト・インダストリアル系のアーティストの一つの潮流であった人間の内面を抉るような神経質的な音が延々続くので万人にはお薦めできないアルバムではあります。とはいうものの彼らがベースにしているサウンドが意外なほどに最先端のダンス・ミュージックの要素と連動しているのを改めて感じた作品でもあります。

試聴音源はこちらから
http://www.amazon.com/Buried-Dreams-Clock-DVA/dp/B00005MLNI
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不条理音盤委員会 372 Test Department 「自由の仮面」
- 2006/06/04(Sun) -
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UKのインダストリアル/パフォーマンス集団のTest Departmentの2ndアルバム「The Unacceptable Face of Freedom」です。Alistair Adams、Graham Cunningham、Tony Cudlip、Gus Ferguson、Paul Jamrozyをコア・メンバーとしている彼らは何かとEinstürzende Neubautenと同時に語れられることも多いのですが、メタル・パーッカションの多用という意味で共通する部分は確かに指摘できると思います。しかし、当時のポスト・インダストリアル・シーンの中にあってENのフリーキーで前衛芸術に近い音と比較すれば、和太鼓にインスピレーションを受けたという持続的な低音のビートと乱打される高音部のメタル・パーカッションが構築する音、そして反権力の立場を明確にした強烈な政治的メッセージというそれは極めてリアリスティックな緊張感を醸し出しているような気がします。このアルバムでは従来のインダストリアル・サウンドとダンス・ビートを結合させたという意味で、彼らにとって新たな局面を見出した作品とも言えるのですが前作の凄まじいまでの音を期待していた片桐にとっては、Nocturnal Emmisons、SPKに続いてTest Deptもエレクトロニクス路線に走ってしまったことで少々がっくりした記憶があります。直角的なビートに挿入されるアジテーションと打ち鳴らされる金物類、バグ・パイプとオーケストレーションまで導入された非常にダンサンブルな「Fuckhead」、アンセム調の荘厳な音に乗せて「UKはアメリカの51番目の州だ!」と強烈にアジる「51st State Of America」、アルバニアの政治家(Webにはいろいろと説明がでているのですが。。。)Enver Hoxhaへの連帯を表明した「Comrade Enver Hoxha」、単一なビートが延々繰り返されるもっともTest Deptらしい「Fist」、Alan Sutcliffeという人の書いた文章を元に、失業者の立場から反権力を高らかにアジっていく「Statement」、リズム・ボックスとシーケンサーをノイズ・サウンドと結びつけた「The Crusher」、アメリカを連想させる音の断片がコラージュ・ミックスされ、バグ・パイプが吹き鳴らされるアメリカ批判の内容の「Victory」、力の限り振り絞ったようなうめき声と金属音が最後に炸裂し、水音のSEが妙に切なさを共感させる「Corridor of Cells」、彼らにしては珍しくファンキーで(多分皮肉なのでしょうが。。。)、現在のクラブで流れても違和感がないような「Face 1」、スリリングな展開の「Face 2 (a.k.a. "More Of Everything") 」、冒頭の曲のヴァージョン違い(というかスカスカの音)の「Face 3」まで、当時の英国社会に対する怒りと覚醒を映像的なイメージを喚起させる音で伝えてくれているという印象があります。現在のCDジャケットは何故かオリジナルのものではなく、インナー・スリーブに使用されていたものになっていますが、画像がこのアルバムのオリジナル・ジャケットです。ちなみにこのアルバムは国内でも発売されたのですが、どれだけ売れたのか知りたいところでもあります(笑)。

試聴音源はこちらから
http://www.mp3.com/albums/166574/summary.html
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不条理音盤委員会 352 Cassandra Complex
- 2006/04/22(Sat) -
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Paul DillionとRodney Orpheusによって80年代前半に結成されたCassandra Complexは初期の頃はゴシック・サイケ路線に近い割とノイジーなダンス・ポップを展開していたのですが、Paulが脱退した85年頃からエレクトロニクスを大幅に取り入れたいわゆるエレクトリック・ボディー・ミュージックにフォーマットを変更するようになります。同時に所属レーベルもRouskaからPlay It Again Samに移動して毎年の如く作品を発表することになります。彼らはCabaret Voltaireに影響を受けたと思われるのですが、その音もまさにその亜流に近いサンプリング・コラージュとテクノ・ビートを融合させたもので、まさに本家Cabaret Voltaireが方針転換した姿勢そのままの展開をしているところに、当時苦笑したものでした。この「The War Against Sleep」は1992年に発表された7枚目?のアルバムでシンプルながらも現在の音響系の元祖のようなエレクトロニクスの使い方に好感をもてるアルバムに仕上がっています。中期Depeche ModeとJoy Divisionが合体したような「What Can I Do For You?」、ノイジーなギターが鋭角的なビートと共に暴れまわる「Dr. Adder」、Joy Divisionのパクリとしか言いようがない程そっくりな「And You say」、アジアっぽいシンセとギターの音色がサイケデリック風味を感じさせる「Why?」、ついTalk Talkの名前を思い出してしまうようなデカダンス的な「She Loves Me」、O.M.DがUltra Voxしたようなブラス・シンセの音が印象的な「Awake All Night / When Love Comes」、ネオ・サイケ色の濃い「Tell Me」、シューゲイザー的な「Lullaby For The First Baby Born In Outer Space」、エレクトロニクスを駆使したコラージュが延々続く大作の「Lakeside」まで、オリジナリティーという面では稀薄なのですがダンス・ビートを意識している割には踊れない(笑)といった奇妙な側面もあり、個人的にはこのユニットはゴシック路線を歩む途中でメンバー脱退等で手薄になったサウンド面を補うべく手段として、仕方なしにエレクトロニクスを導入したのではないかと思ってもしまいます。Rodney Orpheusの自己耽美に走ったヴォーカルは結構好きなのですが。。。。。。

試聴音源はこちらから
http://www.mp3.com/albums/47819/summary.html

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不条理音盤委員会 310 Cindytalk 「Camouflage Heart」
- 2006/02/25(Sat) -
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スコットランド出身のGordon SharpのユニットCindy Talkが1984年にリリースした1stアルバムです。Gordon Sharpの名前は知らなくともThis Mortal Coilの「Kangaroo」「Songs To Siren」での歌声ならば覚えている方も多いと思います。Cindytalkも基本的にはそういったエレクトロニクスを多用したゴシック/インダストリアル系の音なのですが、耽美的というよりもテンションの高い音を背後にGordon Sharpのヴォイスが絡むといったスタイルは初期のCabaret VoltaireあるいはClock DVAに近いような印象があります。不安を惹起するような不規則なパターンのリズムとピアノ、鋭く切り込むギターと叫ぶようなGordonのヴォーカルといった刺激的な「It's Luxury」、宗教的な色彩のある重苦しいサウンドに呻くようなヴォーカルが不気味な「Instinct (Backtosense)」、フリーキーにギターとドラムが暴れまくる(この曲でドラムを叩いているのはEx-Birthday PartyのMick Harvey)「Under Glass」、何かを訴えかけるようなヴォーカルがノイズ・サウンドにまみれる「Memories of Skin and Snow」、アンビエントなピアノをフューチャーし、後半部はラジオ・ノイズを導入した前衛的な「Spirit Behind the Circus Dream」、鼓動のようなリズムの上を幾重にもエコーを重ねられたヴォーカル・パートが重層的に響く「Ghost Never Smiles」、初期Cabaret Voltaireのようなコラージュ・サウンドの「Second Breath」、更にノイズ・インダストリアル的な音の密度が増し、E.NeubautenやFad Gadgetにも通じる混沌さを感じる「Everybody Is Christ」、ピアノとSE風のシンセだけの美しいナンバーの「Disintegrate...」まで、極度に緊張感の高い研ぎ澄まされたようなインダストリアル風の音が連続しています。彼が歌う世界はおそらく絶望に満ちたものであろう事は、ジャケットの「desire」の下のX印や、裏面の写真に「for those who came and will come closer」あるいは「I set aside some time to look up into heavens,but what I see is not rich but a comouflage heart on a lakeside…」と記されていることからも類推されます。とにかくどことなく死の香りが漂うようなアルバムなのであります。

試聴音源はこちらから
http://www.mp3.com/albums/26905/summary.html

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不条理音盤委員会 148 23Skidoo 「Urban Gamelan」
- 2005/07/17(Sun) -
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23 Skidooは英国のインダストリアル・ミュージックから派生したユニットです。AlexとJohnnyのTurnbull 兄弟にFritz Haamannを加えた3人組として、1984年に発表されたのがこの「Urban Gamelan」です。元々世界の宗教音楽や土着系のビートをNWに組み込んだサウンドが個性的だった23 Skidooが今回挑戦したのはインドネシアのガムランというのは衝撃的でしたが、実際に聴かれるサウンドはガムランのスタイルを模倣したとはいえ、メタル・パーカッションを駆使した前衛的なノイズ・サウンドでした。それがまた非常に快感で、タイトル通りに都会的であり、また民俗音楽的であるという二律背反の音に仕上がっています。旧A面に相当する曲では捻じ曲がったファンク・ビートと宗教音楽を結びつけたような「Fire」やコラージュぽい音に深いエコーのトランペットがかぶる「Misr Wakening」といった曲は蒸し暑い日々にピッタリですね。しかし、この時期の最高傑作は実は国内でも12インチで発売された「Language」です。このアルバムではダブ・ヴァージョンとして平凡な響きなのですが、12インチの方では打ち鳴らされる竹製の打楽器類と、太いベース、意味不明のヴォーカルに加えて、テープ・コラージュとやりたい放題。中古盤市場でも1万円の値がつく名盤なのです。

試聴音源はこちらから
http://www.mp3.com/albums/166705/summary.html

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